幻声 ページ46
聞こえた、と思っていた彼らの声は幻聴だったのかもしれない。
ー幻声ー
次の瞬間には…何も聞きとれなくなっていた。
けれど、
それでも、
確かに自分は、
今、光の中にいた。
補聴器なしで彼らが話し掛けてきた言葉を理解するのは厳しかった。
けれども現状を理解していてくれた彼らは、
ゆっくり、
自分にわかるように口を動かし話をしてくれた。
『もう、どこも行かんといてな。』
行かない、
もう、二度と。
その言葉に大きく、しっかり頷き返した。
部屋に入って来たマネージャーさんは、自分を見るなりひどく驚いた顔をした。
腕を引かれるまま乗り込んだ車には彼らも一緒で、行き先は聞かずともわかった。
自分自身、社長と話さなければならないことがたくさんある。
…彼らと共に活動したい、
自分の言葉で社長に伝えよう、
そう思っていた。
もちろん、
今の自分の現状を理解してもらった上でだ。
だから社長の問いに素直に答えた。
怪我の後遺症がある以上、前のように活動出来ないのは重々承知。
それを隠したからといって、バレるのは時間の問題だ。
そんな悪あがきをしたいわけではない。
ただ彼らと共に、
それだけだ。
『続けられる？』
そう動いた社長の口。
「はい。」
すんなり出た言葉。
離れたくないのだ、もう二度と、彼らと。
これは、自分の意思。
もう自分は、
あの頃の自分ではない。
無気力な、
そんな自分はもういない。
だから、
だから、お願い
『残念。
キミはもういらない。』
目の前でそう動いた社長の唇。
…いらない、
と捨てられるのは何度目だろう。
今日、
自分は、
任期満了を迎えた。
自分に与えられた仕事が、終わったのだ。
頭が真っ白になった自分は、
彼らに肩を叩かれるまで、その場を動けなかった。
やはり自分の考えは甘かった。
心の何処かで、
社長は自分を再び迎え入れてくれる、
そう思っていた。
社長室から出た自分に、彼らは顔の前まで寄って話し掛けてくれている。
なのに、
その口の動きを読み取ろうとする気力さえなかった。
終わってしまったのだ。
…ようやく始まる、
そう思っていたのに。
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芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、いつもコメントありがとうございます。予定していたよりも長くなってしまい、今作で完結は厳しくなってしまいました。すみません。続編もお付き合いいただけるようでしたら、是非ともよろしくお願い致します。 (2018年3月23日 12時) (
レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねぇー(プロフ) - ジャニーさんの冷たさが、ちょっとツボにはまる。小説だから、感情しだいでは、やさしさにも感じるし。意味を分かるのにおもしろくて。また、楽しみにしています・ (2018年3月22日 0時) (レス) id: 782068d67c (このIDを非表示/違反報告)
芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、いつもコメントありがとうございます。更新が止まってしまい、ご迷惑をお掛け致しました。冷たくされる時はとことん冷たく、その反対に想いが通じ合えば、優しく甘くあたたかく、ヒロインを大切にしたいです。 (2018年3月15日 14時) (レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねぇー(プロフ) - ついにきましたねー。みんな、あったかたいです。 (2018年3月14日 20時) (レス) id: 782068d67c (このIDを非表示/違反報告)
芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、返信が遅くなってすみません。このドキドキが自分も大好きです！ (2018年3月3日 13時) (レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芹生 | 作成日時：2018年1月8日 10時
