光届 ページ41
警備員に両脇を抱えられながら連行され、半ば押し込まれるように入らされた小さな一室。
数人の警備員に周りを取り囲まれパイプ椅子に座らされた。
ー光届ー
険しい表情でまくし立てられるように何か言われてるのはわかるが今の自分には聞きとれない。
そんな反応が薄い自分に相当御立腹な警備員は、目の前の簡素なテーブルを何度も叩いていた。
その音に驚き竦むことさえも今の自分には出来ないのに。
「ご迷惑をお掛けして、すみません。」
自分の発した言葉は、はたして聞こえただろうか。
そんな最中頭を駆け巡るのは忘れていた記憶たち。
すべてが走馬灯のように思い出された。
それと同時に組員達から受けたあの時の凌 辱の記憶は、
全てを抹消したいと思う程酷く心に傷痕を残した。
あまりの辛さにいっそ一思いに殺してくれ、そう幾度となく思った。
カラダもココロもバラバラに引き裂かれ、もう二度と陽の目を見ることはないのだと感じた。
けれど、
その瞬間でも彼らを思うと、
生きたい。
生きたい。
生きてやる。
こんなとこで死んでたまるか。
…不思議と力が湧いた。
ただ一つ自分を生へと突き動かす何かがあったとするならば、それはこの思いだけ。
地べたを這う自分を照らす圧倒的な光。
何故、たとえ一時でも、忘れてしまっていたんだろう。
いや、『何故』なんて考えるだけ野暮だ。
…思い出せて良かった。
あぁ、彼らになんて言おう。
突然消え、また現れた自分に、
村上さんと横山さんは酷く驚いていた。
記憶がなかったとは言え、失礼なことをしてしまったと思う。
言いたいことはたくさんある。
…はずなのに、
それをどんな言葉にしようかと考えるだけで、頭がパンクしそうだ。
けれど、
そんな人間らしい今の自分が嫌いではない。
こうして思い悩むのもまた、「生きる」ことだから。
その時ふと声が聞こえた。
補聴器がなければ、人の会話など聞き取れないに等しい自分に。
もう一度、聞こえた。
心に光がさすように。
「なにしとんねん。」
周りを取り囲んでいた警備員が一斉に離れる。
ひらけた視界の先に佇む7人の姿。
そうか、言葉なんて必要なかった。
導かれるように彼らに差し出した右手。
光へ伸ばした手。
その手は、
ようやく光に届いた。
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芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、いつもコメントありがとうございます。予定していたよりも長くなってしまい、今作で完結は厳しくなってしまいました。すみません。続編もお付き合いいただけるようでしたら、是非ともよろしくお願い致します。 (2018年3月23日 12時) (
レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねぇー(プロフ) - ジャニーさんの冷たさが、ちょっとツボにはまる。小説だから、感情しだいでは、やさしさにも感じるし。意味を分かるのにおもしろくて。また、楽しみにしています・ (2018年3月22日 0時) (レス) id: 782068d67c (このIDを非表示/違反報告)
芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、いつもコメントありがとうございます。更新が止まってしまい、ご迷惑をお掛け致しました。冷たくされる時はとことん冷たく、その反対に想いが通じ合えば、優しく甘くあたたかく、ヒロインを大切にしたいです。 (2018年3月15日 14時) (レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねぇー(プロフ) - ついにきましたねー。みんな、あったかたいです。 (2018年3月14日 20時) (レス) id: 782068d67c (このIDを非表示/違反報告)
芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、返信が遅くなってすみません。このドキドキが自分も大好きです！ (2018年3月3日 13時) (レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芹生 | 作成日時：2018年1月8日 10時
