走出 ページ36
最終日の今日は、起床してからずっとソワソワしていたようで、奥さんに『なんか変よ？』と笑われてしまった。
ー走出ー
自分でもどうして今日はこんなにも落ち着かないのか、不思議だった。
はやる気持ちを抑えきれず、
この5日間で最も早く家を出て現場に向かった。
なのに、
こんなにも気持ちはワクワクと妙に浮き足立っているのに、
キィーン…
…まただ。
痛みを感じるほどになった耳鳴りに顔をしかめた。
ここのところ強く感じていた耳鳴りの原因を補聴器の具合のせいにしていたけれど、
…どうもそれだけではないようだ。
確実に、
外の音が…聞こえにくくなっているのを感じた。
「お世話になります。」
「いよいよ最後だね。
今日も1日よろしく頼むよ。」
「はい。
こちらこそよろしくお願いします。」
お店の常連さんで、自分に仕事を斡旋してくれた男性。
こんな自分を使ってくれて、本当に感謝している。
出来ることは少なかったけれど、
自分にとっては貴重な、充実した時間だった。
知り合いも出来た。
難聴な自分をすんなり受け入れてくれた同じ雑用のスタッフ。
今日で別れるのが本当に残念に思う。
…そして、
やはり、彼らに会いたかった。
仕事をしているとあっという間に陽が落ち、
夕方に始まったライブももうすぐ終わる時間。
ライブ中、賑やかな会場内に入ることはなく、中の雰囲気は一切わからなかったけれど、
場所によって音がもれ聞こえる。
…この耳でなけれは、もっと鮮明に聞けただろう。
その歌が、
なぜか胸にすっと入って、
自然と続くメロディーを口ずさむことが出来たのは、
やはり彼らと自分との間になんらかの繋がりがあるからなのだろう。
そんな気がする。
…気がするだけだ。
なんで？
なんでだっけ…
…あぁ、
…そっか。
あぁ…
そう、だった。
なんでもっと早く思い出せなかったんだろう。
なんで、忘れてたんだろう。
そうだ、
自分は、生駒。
生駒A。
弾かれたようにその場から走り出した。
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芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、いつもコメントありがとうございます。予定していたよりも長くなってしまい、今作で完結は厳しくなってしまいました。すみません。続編もお付き合いいただけるようでしたら、是非ともよろしくお願い致します。 (2018年3月23日 12時) (
レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねぇー(プロフ) - ジャニーさんの冷たさが、ちょっとツボにはまる。小説だから、感情しだいでは、やさしさにも感じるし。意味を分かるのにおもしろくて。また、楽しみにしています・ (2018年3月22日 0時) (レス) id: 782068d67c (このIDを非表示/違反報告)
芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、いつもコメントありがとうございます。更新が止まってしまい、ご迷惑をお掛け致しました。冷たくされる時はとことん冷たく、その反対に想いが通じ合えば、優しく甘くあたたかく、ヒロインを大切にしたいです。 (2018年3月15日 14時) (レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねぇー(プロフ) - ついにきましたねー。みんな、あったかたいです。 (2018年3月14日 20時) (レス) id: 782068d67c (このIDを非表示/違反報告)
芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、返信が遅くなってすみません。このドキドキが自分も大好きです！ (2018年3月3日 13時) (レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芹生 | 作成日時：2018年1月8日 10時
