前兆 ページ28
「ただいま帰りました。」
ー前兆ー
「おかえりなさい。
どうだった〜？」
「…何とか、なりそうです。」
本音は、記憶を失ってから初めての賑やかな外の世界にただただ圧倒された。
けれど、仕事自体は重労働でも決して嫌ではなかった。
「明日も早いんでしょう？
こっちは大丈夫だから早めに休みなさいね。」
「はい。」
奥さんの言葉に甘え、忙しい店内を横目に借りている部屋へと戻った。
そして、シャワーを浴びながら思う。
…この胸のつかえはなんだろう、と。
これが、記憶が戻る前兆なのだとすれば、
なんとも言いようがない不快感だ。
奥さんに言われた通り、早々にシャワーを切り上げ布団に入ると目を閉じた。
色々考えると目が冴えてしまいそうだったけども、体は自分が思っていたより疲弊していたらしく、あっという間に眠りについた。
ーーーーーー
肩を揺すられた。
『おはよう。』
目を開けると奥さんの唇がそう動いた。
朝日が差し込む部屋。
こんなによく眠れたのは久しぶりな気がした。
昨日と同じように支度をし、
昨日と同じ場所へ向かう。
2日目の今日は、要領がわかって昨日よりもスムーズに仕事をこなせている気がした。
それでもアレコレと雑用は沢山あり、ゆっくり一息つける時間は昨日同様ほとんどなかった。
気付けばあっという間に外は真っ暗。
驚くほど時間が経つのが早い。
屋外での雑用がひと段落し中へ移動すると、荷物を運びながら昨日男性に指摘されたことを思い出した。
スタッフの人だったのだろうか？
帽子をかぶっていたし、あまりジロジロと顔を見てはいけない気がして、どんな人だったかは思い出せない。
不自由な左半身を壁際に寄りかからせて荷物を抱えなおすと、邪魔にならないよう進んだ。
そうそう、確かあんな感じの人だった気がする。
少し先で佇んでいる人を見てそう思った。
避けつつ横を通り過ぎようとした瞬間、声を掛けられた。
「ちょっとええか？」
昨日の人だ、と認識した瞬間、咄嗟に浮かんだのは、
また何かやらかしてしまったかもしれない、
という焦り。
「あ、…はぃ。」
少し身を固くすると、男性の後をついて行く。
何故かこの男性の後ろ姿に妙ななつかしさを感じるのは、
昨日の今日、というだけのことなのだろうか。
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芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、いつもコメントありがとうございます。予定していたよりも長くなってしまい、今作で完結は厳しくなってしまいました。すみません。続編もお付き合いいただけるようでしたら、是非ともよろしくお願い致します。 (2018年3月23日 12時) (
レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねぇー(プロフ) - ジャニーさんの冷たさが、ちょっとツボにはまる。小説だから、感情しだいでは、やさしさにも感じるし。意味を分かるのにおもしろくて。また、楽しみにしています・ (2018年3月22日 0時) (レス) id: 782068d67c (このIDを非表示/違反報告)
芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、いつもコメントありがとうございます。更新が止まってしまい、ご迷惑をお掛け致しました。冷たくされる時はとことん冷たく、その反対に想いが通じ合えば、優しく甘くあたたかく、ヒロインを大切にしたいです。 (2018年3月15日 14時) (レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねぇー(プロフ) - ついにきましたねー。みんな、あったかたいです。 (2018年3月14日 20時) (レス) id: 782068d67c (このIDを非表示/違反報告)
芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、返信が遅くなってすみません。このドキドキが自分も大好きです！ (2018年3月3日 13時) (レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芹生 | 作成日時：2018年1月8日 10時
