目覚 ページ22
「どう？聞こえる？」
「そう、ですね。なんとか…」
ー目覚ー
あの日、まわりの明るさに目が覚めたら真っ白な天井が目に入った。
瞬時に自分のおかれている状況を理解出来ず戸惑ったのを覚えている。
慌てた様子で駆け寄ってきた人達がしきりに何か言っていたようだったけども、
…その言葉を聞き取ることが出来なかった。
気が動転していただけの理由ではない、
実際に聞こえなかったのだ。
両耳の鼓膜の損傷が激しいらしく、左耳は完全に使いものにならないという。
右耳は辛うじて機能しているけれど、補聴器を付けないとほぼ聞き取れない。
耳だけじゃない。
左目はほとんど見えない。
骨折してる箇所もかなりあり、内臓の損傷も激しいと言われた。
これからリハビリしても、左半身の麻痺は多少なりとも残るそうだ。
こんな状況におかれた自分。
…何故そうなったかは、わからない。
当時、路上で瀕死状態だった自分を見ず知らずの人が病院に運んでくれ、緊急手術の末一命を取り留めた。
その後一週間近く生死を彷徨い、生きてることが不思議だと何度も医師が言っていた、
らしい。
けれど幸いなことに回復が早く、
3ヶ月という驚異的な早さで退院が出来た。
そして、
そのまま助けてくれた人の家にお世話になっている。
それから3ヶ月。
相変わらず自分は、助けてくれた御夫婦の家で厄介になっている。
リハビリのせいか、一人である程度のことが出来るようなった今、夜の店を営業している2人
の手伝いをするのが日課だ。
それが目が覚めてから今まで、
この半年の経緯。
…というのも、
それより以前の記憶がない。
自分が誰なのか、
名前すらわからない。
何故あんな大怪我を負って、道端に倒れていたのか皆目見当もつかない。
記憶障害は一過性のものだと医師は言っていたけれど、目が覚めてから今まで、記憶のきの字も出てこない。
恩人は瀕死の自分を助けてくれ、治療費を払い、さらに帰る家もない自分を引き取ってくれた。
今だって、
聞こえが悪い自分の為にこうして補聴器の調整までしてくれる。
恩人であるこのご夫婦に、
どうこの恩を返せば良いのだろう。
今自分が考えるのはそのことばかりだ。
大切なはずの記憶は深い深い霧の中。
けれど今の自分には、
目覚める以前の記憶の重要性を感じる余裕はなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 269人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、いつもコメントありがとうございます。予定していたよりも長くなってしまい、今作で完結は厳しくなってしまいました。すみません。続編もお付き合いいただけるようでしたら、是非ともよろしくお願い致します。 (2018年3月23日 12時) (
レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねぇー(プロフ) - ジャニーさんの冷たさが、ちょっとツボにはまる。小説だから、感情しだいでは、やさしさにも感じるし。意味を分かるのにおもしろくて。また、楽しみにしています・ (2018年3月22日 0時) (レス) id: 782068d67c (このIDを非表示/違反報告)
芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、いつもコメントありがとうございます。更新が止まってしまい、ご迷惑をお掛け致しました。冷たくされる時はとことん冷たく、その反対に想いが通じ合えば、優しく甘くあたたかく、ヒロインを大切にしたいです。 (2018年3月15日 14時) (レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねぇー(プロフ) - ついにきましたねー。みんな、あったかたいです。 (2018年3月14日 20時) (レス) id: 782068d67c (このIDを非表示/違反報告)
芹生(プロフ) - ゆきねぇーさん、返信が遅くなってすみません。このドキドキが自分も大好きです！ (2018年3月3日 13時) (レス) id: a784c79873 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：芹生 | 作成日時：2018年1月8日 10時
