【gr】蛮族さんのもてなし方 ページ17
あ、夢だ。
と、その光景を見てすぐにわかった。
所謂明晰夢というやつ。
森の中を駆け回る少年と少女。
可愛らしい笑顔を浮かべる少女のことを、少年が嬉しそうに笑いながら追いかけている。
そんな2人の顔にはよく見覚えがあった。
あれは間違いなく幼い頃の私とグルッペン。
今の私はそんな2人を上から撮影している、
簡単に言うとそんなような視界だ。
でも私が一瞬で夢だとわかった理由は視点じゃない。
私と彼の幼少期があんな平和で上流貴族みたいなものなわけないのだ。
こんなんじゃなくて記憶によれば、こう、もっと野蛮な─────
その瞬間、パッと視界のチャンネルが変わり、唐突に動き出した。
「おいこのクソアマ！本返せっつってんだろ！」
「やだね！取り返せるものなら取り返してみなさいよ！今日1日も外に出てないヒキニートくんには所詮無理でしょうけどね〜！」
「おおん？上等だよやってやるよ！俺に一度も勝ったことねえくせに！」
……確かにこれだけどさ。夢なんだから記憶程度で左右されてないで、もう少し夢のある夢見せてよ。
さっきとはうって変わって一人称視点になり、私の視界はぐらぐらと揺れる。
鬼ごっこなんてもうすっかりやらなくなってしまったので久しぶりのこの感覚に酔いそうだった。
うーんと、確かそこの木を右に、そこも右、あ、ここで上に跳ぶんだろうな私は。でもね、そこを上に跳ぶなんて多分グルッペンは予想してるよ。
あ、ほら、
捕まっちゃった。
「あー、また負けた！」
「ったく、手間かけさせやがって」
汗を拭う姿まで絵になる金髪野郎に、私は寝っ転がりながら本を渡した。
そして彼は本に傷がついてないか確かめるためにぱらぱらとページをめくる。無事なことを確認すると、しおりを挟んであったページを開いて、私の隣に腰を下ろした。
「……『ああ私の愛しい人よ。私のために諸手を上げて戦おうと仰るのですか』」
「……読んだのかこれ」
「生憎村の図書館にある本は全部読まされてるよ」
ふーん、と興味なさそうに彼は呟く。
「流石村一番の貴族の娘」
「そうでしょうそうでしょう。ところで何でそんなの読んでんの。ただの純愛ものだよ？戦争はするけど」
「役場の教授に、この本を読んでモデルになった戦争を当てられたら、講義を受けさせてやってもいいとドヤ顔で言われた」
「クエスチョン、古代ギリシアで起きた女絡みの大戦争と言えば」
「トロイア戦争」
「正解正解大正解」
手で作った丸をひらひらと振る私を見てグルッペンはため息をついた。
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もちえもん(プロフ) - 雛菊さん» はい！どの作品も言い回しや話の切り方、設定など参考になりますし大好きなので楽しみにしております〜(*´▽｀*) (2017年5月21日 9時) (
レス) id: 801b233da8 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - もちえもんさん» もちえもんさん！いつも本当にありがとうございます！上手く回収できていたら嬉しいです（笑）最近設定が重すぎたのでかる〜いものを書こうと思います〜 (2017年5月21日 9時) (レス) id: c858a49007 (このIDを非表示/違反報告)
もちえもん(プロフ) - 2度目のコメントですみません、本当に！素晴らしいお話をありがとうございました！！展開が読めず、更新される度にどうなるのかとワクワクしたものです。｢太陽を掴んだ｣という言葉が最初から読んできた身としてはたまらなかった…。ゾム楽しみですぅ…m(_ _)m (2017年5月21日 0時) (レス) id: 801b233da8 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - もちえもんさん» あああどうもありがとうございますご贔屓にして頂いて……！言葉選びは好きで試行錯誤をしていることなので、褒めて頂けて嬉しいです（泣）創作は切磋琢磨が1番だと思うので拙いながらも参考になるのであればどうぞご遠慮なく！こちらこそよろしくお願いします。 (2017年5月15日 1時) (レス) id: c858a49007 (このIDを非表示/違反報告)
もちえもん(プロフ) - お世話シリーズから何度も繰り返し読ませていただいていますが素晴らしいです、本当に。どの話もど好みで今書かれている話も本当に好きです。言葉の選び方が本当に大好きです。参考にしたいですが私の文章力では程遠い…！これからも愛読させていただきますm(_ _)m (2017年5月15日 1時) (レス) id: 801b233da8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雛菊
| 作成日時：2017年5月4日 9時
