【d】ぎすmemoGS【短編番外】

↑【Gside】 ページ44

中に入ると最初の部屋にブラウン管テレビが1つ置かれていた。画面はわざとらしく荒れていて何も映っていない。

───ザザッ

突然テレビに映像が流れ始める。隣にいるAはそれに対してやっぱりひっと小さく声をあげた。
画面に映ったのは若い男。オールバックが乱れて前髪が目を隠してしまっている。


───ようこそ、我が校へ。入学するにあたり君たちに話さなければならないことがあるんだ……ここの学校には昔から言い伝えがあってね……


なるほど考えたな。舞台設定のために最初にビデオを見せるのか。世界観にのめり込むにはうってつけの方法やな。これがあるかないかで怖さがだいぶ違う。

俺は全くもって怖くないからこんな考察までする余裕があるが、さて、お化け屋敷より怖い話のほうが苦手なAちゃんは─────


「はいそういうのなし〜」
「うわああなんで！」

耳を塞いでテレビから頑として目を背けていたので手を掴んで無理やりテレビのほうを向かせた。


「耳なんて塞いでたら怖さ味わえないだろう。」
「味わわなくていいんだってば！やだああ！見たくないいいい！」
「わかったわかった見なくていいから聞いとけ。」
「見てる時より怖い！」

顔を押さえつけられて咄嗟に目をつぶったが音声のみというのは逆に色んな想像が働いて怖かったらしい。しぶしぶ目を開けて唇を噛み締めるAの瞳はテレビの光を反射してきらきらと光っていた。うっわこいつもう泣いてんのかよ。

ついついその表情を見てニヤついてしまう。どうしてこいつの涙目はここまで加虐心をくすぐってくるんだ。

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