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「……何しとんの?」
ーーーーーえ?
ゆっくりと後ろを振り返ると視界に映った緑。想い人のお気に入りの緑色のパーカー。
ーーーーーなんで、
「……話そ思って待っとったんやけどお前俺に気づかず先行くから。追いかけたらいきなり止まって下見とるし、話しかけづらくてな。驚かしてすまん。」
「ぅあ、いや、う、ううん……」
見られた、外見てるの、見られた、見られた、見られた。どうかお願い、気づかないで、誰を探してたか聞かないで。
ゾムくんは頬をぽりぽりかきながら視線をずらしている。何か言いたいけど躊躇ってる。そんな感じ。
「…で?」
「えっ?」
横目でちらとこちらを見て聞いてくるゾムくん。ああもう、かっこいい仕草だなあ。
「え、やのーてお前、俺のこと探してたやろ。」
「まままさか私から振ったくせにそんな未練がましい真似するわけないじゃない!」
「お前から振ったから!こんな風にこそこそしてるんやろA!」
はぁ、とため息をついてゾムくんは一歩こっちに近づいてくる。
私も一歩後ずさったものの後ろはガラス窓なので逃げ場なんてない。私が退路をふさがれ情けなく顔を上げるとゾムくんの目は鋭くこちらを見下ろしていた。
ポケットに両手を突っ込んだままこちらを見下ろす彼は不良みたいに怖い。
「ゾ、ゾムく……」
「へえ、結構いい眺めやん。」
「きゃっ!」
私の右肩まで顔を下げ外の景色を覗いてくる。
「ゾムくんっ耳!息かかってるっ!」
「素直になれんAへのお仕置き。」
「っ!」
耳の痛い言葉にどきりとする。
全部、お見通しなのか。
「ごめん……」
「……人見てんのお前嫌やろけど、ごめんな。」
ぎゅうっ、と圧迫感を感じた。
ゾムくんが、抱きしめてくれている。
胸いっぱいに広がるいい香りと恋しさ。
きっと歩いてる人に注目されてるんだろうな、恥ずかしい。でも全部ゾムくんで隠れてて何も見えない。
あれほど嫌だった感覚はそれ以上の幸福感にかき消されてしまっていた。
「俺のことこっそり探してるとか、可愛すぎて我慢できんわ。」
見上げるとそこには恥ずかしそうにはにかむ彼がいた。
ああやっぱりかっこいいなあ。
「なに見惚れてんねん。」
そう言ってデコピンをしてくる。
そうやって照れて誤魔化す時の台詞だって私よりも上手。
「……正直に好きって言うてもええんやで?」
「…………大好き!」
負けないくらい強い力で抱きしめ返した。
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雛菊(プロフ) - 美桜さん» 通知に気づかず返信が遅れてしまい大変申し訳ありません!2ヶ月以上も前に……(汗)読んで頂きありがとうございます!計算高いトントンはめちゃくちゃ気に入ってるので嬉しいです! (2017年5月15日 1時) (レス) id: c858a49007 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - ヤバいヤバいグルさんも超格好良すぎだけど、トンさんの計算高い感じも格好良すぎぃ! (2017年3月4日 8時) (レス) id: 7a0b0fb690 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - 酒呑童子さん» あああどうもありがとうございますうう!! (2016年11月28日 13時) (レス) id: 6d4fabdf41 (このIDを非表示/違反報告)
酒呑童子 - お化け屋敷のお話がすごく好きすぎて何回もハイルグルッペンしそうになりました...!これからも頑張ってください! (2016年11月28日 0時) (レス) id: 31dd048566 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - テル@コクさん» おおおここにまた我々の忠実な信徒がひとり!ありがたいお言葉です!!がんばります〜〜 (2016年11月27日 9時) (レス) id: 6d4fabdf41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛菊 | 作成日時:2016年8月26日 23時