卑怯な僕は嘘をつく ページ19
「なー君さぁ、いつの間に名前で呼ぶようになったの?」
音楽祭のことでさとみ君と教室で打ち合わせしていた時だ。急に黙ったなと思ったら突然、そう言った。
「あっ、えっ…最近かな」
さとみ君は頬杖を付きながら探るような目で見てくる。居心地が悪くて、誤魔化すようにノートにペンを走らせた。さとみ君は、勘が鋭い。もしかしたら俺の気持ちの変化に気がついているのかもしれない。
「ほら、『遠井さんのお兄さん』っていうの何か長いじゃん?毎回毎回舌噛みそうだしさ〜」
「まあ、そうだな」
「名前で呼んだ方が楽でしょ?」
「…敬語も楽だから?」
心臓が壊れてしまいそうなほど脈を打つ。視線はノートを見たまま。さとみ君の顔が見れない。一体どんな顔してる?
(何で、こんなに焦ってるんだろう…)
別に変じゃないはずだ。仲良くなったんだから名前で呼ぶのもタメ口で話すのも。なのにこんなに焦って、気まずくなるのは────…
(A君のこと、好きになりかけてるからだ…)
さとみ君は仲間だから相談したっていい。けど、それをしないのはまだ俺自身、確信が持てないというのもあるしなにより、『男同士』という壁があるから。さとみ君や皆に引かれて、離れていってしまうのが怖いから俺は言うのを躊躇っているんだろう。
「莉犬君と一緒だよ。敬語は無しでって言われたから」
「ふぅん」
「さとみ君もそうしたら?」
「いや、俺はいい」
それまでずっと俺の顔を見ていたさとみ君が不意に視線を逸らした。
「苦手なんだ、あの人」
「そうなの?まぁ、最初はアレだったけど…」
「そういうのじゃないんだよ」
理由を知りたかったけれど、あまりしつこく聞いて機嫌を悪くさせる必要はないし、それに俺自身がこの話題を変えることができれば良かったので深くは追求しなかった。それに、少しホッとした。さとみ君も俺と同じ気持ちだったらどうしようって不安があったから。
(ああ、やな奴だなぁ俺…)
このまま、さとみ君がA君を苦手なままでいてくれればいいのにって思ってる。
(ライバルはいない方がいい、なんて…仲間に思う感情じゃないよな…)
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───
ちょっと色々あって熱は冷めてしまったんですが、読んでくださる方がいらっしゃるようなので亀更新になりますが、完結させようかなと思ってます。読んでくださってありがとうございます。
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優奈(プロフ) - コメント失礼します!戻ってきてくださってありがとうございます!これからも無理せずに頑張ってください! (2023年2月6日 16時) (レス) id: 613615a1f6 (このIDを非表示/違反報告)
アホの化身 - 恋ぃぃぃ!!その気持ちは恋ぃぃぃ!! (2020年9月14日 17時) (レス) id: 62410cc231 (このIDを非表示/違反報告)
かき氷(プロフ) - 男主攻めの小説ってあんまりないので一気に読んでました!これからも更新無理せず頑張ってください! (2020年9月12日 11時) (レス) id: 078758a332 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:晴太 | 作成日時:2020年8月20日 13時