命短し、恋せよシスコン

僕はまだこの感情の名前を知らない ページ14

最初は変な人だなって思った。この学園は変わり者が多い印象だったけど、やっぱりそう思うのは間違いじゃないんだと改めて実感する。…けど、思ったほどお兄ちゃんは変な人じゃなかった。突拍子もないことを言ったり、したりするのは遠井さんが関わってる時だけで、2人で話すとそこまで変な感じゃない。それは本人も自覚してるみたいだし、ただ単に過保護が過ぎるのかもしれない。俺もりけん君にウザがられることあるし…。

それにお兄ちゃんって意外とモテてる。初めて会った時、変な人って思うと同時に｢カッコイイ人だな…｣って思ったもん。廊下を歩いていると女の子達がカッコイイと言っているのが耳に入ってくる。その度に俺は誇らしい気持ちになる。


｢莉犬君、そんなに見つめられると照れるんだけど…｣
｢…あっ、ご、ごめん！｣


照れくさそうに頬を掻くお兄ちゃんに慌てて謝る。考え事してたら思わず見つめちゃったみたい。

球技大会から俺とお兄ちゃんは結構話すようになってお昼ご飯も一緒に食べることが多くなった。もちろん、遠井さん達も一緒に。皆で食べてるけどあの時程、お兄ちゃんは変な事言ったりしたりすることはなくなった。多分、頑張って気をつけてるんだろうなって思う。遠井さんにも皆と仲良くしてねって言われちゃってるしね。でもジェル君はちょっと苦手みたい。


｢でもびっくりしたよ〜。莉犬君がお兄ちゃんのこと『お兄ちゃん』って呼んでるんだもん｣
｢まぁ、色々あったんだよ。ね、莉犬君｣
｢うん、そうだね｣
｢莉犬君を弟にするなら俺も弟にしてくれてもいいんじゃないですかね！？義兄さん！｣
｢君の場合は義弟(おとうと)だから嫌だ｣


ジトッとジェル君を睨んだ後、お兄ちゃんは｢莉犬君は悪意ないし、こんなに素直な可愛い弟が出来て嬉しい｣とニコニコしながら頭を撫でてくれる。撫でる手が気持ち良くて、思わず目を細めた。お兄ちゃんが嬉しそうで俺も嬉しい。

…けど、何だろう。少し胸がモヤモヤするんだ。
お兄ちゃんが出来て嬉しいって思ってるはずなのに『弟』って言われる度に何とも言えない気持ちになって、お兄ちゃんの事を『お兄ちゃん』と呼ぶ度に切なくなる。でも、この関係を壊したくないって気持ちもあって…




この気持ちは一体なんなんだろう。



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