セブチの敏腕プロデューサー

溢れ出る優しさ ページ48

信頼してた。
溢れる才能の塊と、優しい瞳を。
一緒に良いものを作れると思うとワクワクした。
だからこそ、本性を見抜けなかった自分が悔しくて。
メンバーに余計な負担をかけてしまったことが、申し訳なかった。


『あの〜ジスくん？ここは一体どこ？』
JS『仕事し過ぎて目までおかしくなった？さ、入って』

タクシーから降りたその先にあったのは、我が家…じゃなくて、可愛らしい「洋服屋」。

店員『いらっしゃいませ』
JS『こんにちは。ほらA、洋服選んで』
『え、何故？』
JS『早くしないとお昼になっちゃうよ。その前に行かないと』
『え、どこに？』

意味不明な発言に都度反応すれば、ジスはめんどくさそうにため息をついて服を物色し始める。
む、ムカつく…！

JS『このワンピース可愛いね。A似合いそう』
『…パステルカラーなんて似合わないよ』
JS『え、そう？』

可愛らしい水色の花柄ワンピを私にあて、じっくり見定めるジス。
”新作のワンピースなんですよ〜！”と勧めてくる店員さんと話し込んでいる目は、真剣だ。

(早く家に帰って、気持ち整理したいのに…)

JS『はい、これ試着してきて』
『……へ？』
JS『良いからGO！』

服と一緒に強制的に試着室に放り込まれる。
ここまで来て拒否するのも気が引けて、新品のそれに腕を通した。

『…着たけど』
JS『！』

試着室の前の椅子に足を組んで座っているジスが、驚いたように目を丸くする。

『ほら、やっぱり似合わな…』
JS『すみません。これ、そのまま着ていきます』
『！？』
店員『はい、お買い上げありがとうございます！』
JS『あ。あと、この服に合う靴ってありますか？』
『ちょ、ジス！？』

何を考えているのか。
ジスは結局、花柄ワンピに白のパンプスをお買い上げ。

『ねぇ、どうして？』
JS『ん？』
『こんな…服なんて、買ってもらう義理ないよ』

それに、

『私、早く家に帰って、一人になりたいの』
JS『…』

待たせていたタクシーに乗り込み、私たちはまたソウルの街を走り出す。
さっきまで着ていたジョンハンの服は、ショッピングバックに入れられて、ジスの足元にある。

JS『あるよ』
『え？』
JS『あるよ、義理』

ざあざあと降る雨は、どんどん雨脚を強めていく。
再び握られた手は、やっぱり冷たくて。

JS『これからデートに行こう。服は、その前御礼』
『(絶句)』
JS『それに、』

デートでハニの服着られたら、俺だって気分は良くないからね。

.→←Twitter

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す