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第2話 ページ2

*


ウチの野球部が強豪なのは知っていた。

去年、1年生にして甲子園に出場し
今や都のプリンスとして人気のある、
隣のクラスの成宮くんがエース。


私の野球部の知識は乏しく、ここまでで

こうして、フリーバッティングやノックという
練習メニューを熟していく姿を見るまで
神谷くんがレギュラーであり
外野を守っていることすら知らなかった。


広いグラウンドを風のように駆ける神谷くんは
背中に翼でもついているんじゃないかってくらい
速くて、カッコよくて
見惚れている間に日はすっかり暮れていた。

ちょっと見て帰るつもりが
気付けば、たくさんいたギャラリーは
私を含めてもう5人ほどしかいない。


そろそろ私も帰ろうかと腰を上げたところで
練習を終えた神谷くんが私に駆け寄った。



「送るからちょっと待ってて」

「あ、家近いから大丈夫だよ」

「いや、もう暗いし、心配だから送らせて」



神谷くんはそう言って私の頭にポンっと手を置くと
走って寮の方へ行ってしまった。


あまりにも自然だったから
男の子に頭を触れられたことが初めてだと気付くのが遅れた。



「お待たせ。…ん?」

「な、なに?」

「なんか顔、赤くね?」

「日焼けだよ…」



そう誤魔化せば、
神谷くんは少し考える素振りを見せたが
「そっか」と頷いて歩き出す。


今日は曇り空で、練習に快適な天気だったから
突っ込まれなくて安堵する。



「すぐに帰るかと思ってた」

「うん…。ちょっとだけのつもりだったんだけど…」

「カッコよかった?」

「うん。とても」



深い意味はなくて、本当にカッコいいと思ったから
神谷くんを見上げて素直に頷く。

すると、さっきまで大人びて見えていた彼の表情が
年相応な笑みを見せると、顔に一気に熱が集まる。



「あの…一つ聞きたいんだけど」

「ん?」

「なんで私のこと知ってたの?」


私の問いに、神谷くんは目を見開き
「は?」と首をひねる。


「なんでって、クラスメイトじゃん」

「うん。そうなんだけど…。
同じクラスでも、私影薄いから
名前すら覚えてもらえてないこと多いから」

「けど、俺は知ってるよ。加野 Aちゃん」



不思議だ。

家族にも友達にも、何度も呼ばれてきた名前なのに
神谷くんの声によって呼ばれた自分の名前が
今までと全く違って
心地のいい響きとなってそっと耳に届く。



「神谷くん」

「なに?」

「ありがとう」

「名前覚えてただけで大袈裟だろー。
けどまあ、どういたしまして」

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設定タグ:ダイヤのA , 神谷カルロス俊樹   
作品ジャンル:恋愛
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もっちー(プロフ) - 続きが楽しみです!!更新待ってます🙌💖💖 (8月27日 2時) (レス) id: 28f73aa9c2 (このIDを非表示/違反報告)
名無し52551号(プロフ) - 続きが気になっています! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 990a644328 (このIDを非表示/違反報告)
ポン酢(プロフ) - 何回も読み返して、いっぱいときめかせてもらってます!!更新たのしみにしてます! (2017年12月10日 21時) (レス) id: 1aaa9be303 (このIDを非表示/違反報告)
ユミヤミ - 更新お願いします (2017年8月27日 11時) (レス) id: f8c960a3cf (このIDを非表示/違反報告)
れい - 待ってました!更新頑張ってください (2017年8月22日 23時) (レス) id: 78b913d76d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作成日時:2017年3月2日 17時

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