親近感 ページ5
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夏油君side
けほ、と一つ粉混じりの咳をする。
瓦礫の上で四肢を投げ出し大の字になりながら一緒に空を見上げる。
結局、先輩が呪具を一振して出来た呪力の壁のようなもので少し服が焦げる程度で済んだ。
見上げた空は、クラスメイトの目のように碧かった。
多分本体の呪霊は、爆発に巻き込まれたのだろう。
強く感じていた呪力が綺麗さっぱり消えている。
｢……夜寺先輩｣
『ん？』
｢さっき、自分の術式が怖いかって聞いてましたね｣
『あー……うん、忘れて良いよ』
｢私も、たまに怖がられることがあります。
先輩は特に何も言わなかっけど、怖いとか思いましたか？｣
『いや、全然。
持って生まれてしまっただけだからね、生き残る為なんだから仕方ないよ』
ふと、彼の横顔を見つめる。
変わった術式を持っている、とだけ話したけれど特に何か嫌な顔をされるとかでは無かった。
ただただ、自然体で接してくれた。
｢…なら、先輩の術式も怖くは無いです｣
『！』
パチ、と此方に煤で真っ黒になった顔を向けた先輩と視線が合う。
紫のそれが微かに見開かれて、次いでゆるりと細められた。
『…ありがとう。
君ならそう言ってくれると思ってたよ、なんでだろうね』
｢はは、なんですかそれ｣
『ふふ。
…そうだね、折角答えてくれたんだから俺も質問に答えよう』
顔を空に戻し、どこか寂しげな眼でまた見上げた。
『不味くは、無いよ。
というか無味無臭だからそういう概念じゃないのかも。
けどね、代わりに吸収した魂の人生の記憶が一気に流れ込んでくる。
痛み、悲しみ、苦しみ、それから喜怒哀楽まで。
…だから、ちょっとばかし苦しい、かな』
｢…｣
｢私も｣
それから、ポツポツと話始めた。
呪霊の味、調伏について、それから今回の話。
暫く、お互いに空を眺めながら語り合っていた。
そして、私のお腹が鳴り始めた辺りでどちらともなく笑いあった。
揃って起き上がり、パンパンと灰色になったり白くなったりした制服を叩く。
これは後でクリーニングに出さなければ。
｢……夜寺先輩｣
『ん？』
｢下の名前で呼んでも、良いですか｣
『、』
『良いよ。
じゃあ、傑君ね』
｢はい。｣
じわ、と底から暖かいものが迫り上がってくる。
緩みそうになる顔を必死に抑えていれば、先輩が優しく微笑む。
『じゃあ』
｢？｣
『帰ろう、傑君』
｢……はい、美月先輩｣
嗚呼、本当に、好きだなぁ。
続く
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作者名：墨風 レイカ | 作成日時：2023年5月28日 1時
