死神が愛した男 ページ2
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夏油side
｢ｧｧ……アソボォ｣
子供の小さい手足を肉の塊にくっつけて、そのまま捏ねくり回したような悍ましい姿の呪霊が泥に似た粘性の液体を垂らしながら夜寺先輩に手を伸ばす。
スゥ、と隣で息を吸う音が聞こえる。
｢アソボォヨオオオオ！！｣
一呼吸置いた後、大人と子供が混じったような声が辺り一面に響き渡る。
肉塊から生成された無数のおびただしい手がこちらへ伸びてくる頃には、もう隣には彼は居なかった。
ふっと口角を上げ、その場からは一歩も動かぬまま、頭を傾ける。
ーー上だ。
高い天井にトッと足を付け、蹴った勢いで壊れかけたシャンデリアの上に着地する。
しかし、それを呪霊が見逃す筈も無い。
シャンデリア以外に逃げ場が無い天井付近で、彼目掛けて無数の手が迫り来る。
だけど、それでやられるようなら私が何もせずに悠々と見守っている筈が無い。
大きな音と共に、先輩が乗っていたシャンデリアが粉々に砕け散る。
ガラス片と、それから天井の微かな石片がパラパラと舞い落ちる。
空中に飛び出した彼が、片手に持った呪具を構え直しーー
一閃。
横薙ぎに振るわれたそれが、瞬く間に長く伸ばされた手を両断する。
呪霊の悲鳴にも似た絶叫が響き渡り、思わずほんの少しだけ米神に力を入れた。
重力に身を任せそのまま呪霊の真ん中付近目掛けて落下しーー
『霊々冥魂操術』
凛とした声が、響く。
『散華』
呪霊本体ではなく、虚空を。
一見なにも無いところを切り裂いたようにも見えるその攻撃は、しかし正しく呪霊の命を裂いたようで断末魔の叫びを上げて絶命した。
本体には傷一つ無い筈なのに、まるで"魂を抜かれたように"
トッ、と降り立った先輩がまた虚空を手を伸ばす。
空中で何かを掴み取り、口元を開けた。
ゴクン。
まるで、私のように何かを飲み込んだ。
細くしなやかが指が小さな喉仏を撫で、一瞬端正な顔が不味そうに歪む。
そしてこちらに顔を向けた先輩は、なんだか酷く気まずそうだった。
『あー…その、一回手を出さずに見てて欲しいって言ったのは俺だけど……あー……』
｢？｣
『…その……怖くない？俺の術式』
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作者名：墨風 レイカ | 作成日時：2023年5月28日 1時
