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「マーサーイ、おーきーて」
アルバム用のデータを渡した次の日の正午
マサイが起きない。
結局わたしが煽ってしまったせいだろう。
疲れたのか眠りが深いようだ。
さっきからイタズラしても起きない。
綺麗な寝顔に落書きしてしまいたくなる気持ちを
グッと抑えてメモ用紙に伝言を書いておく。
合鍵も渡してあるし、起きたらどうにかするだろう。
支度を整え、タクシーでプロデューサーの事務所へ向かう。
なんだかんだこの事務所への出入りが多いからか
ほとんど顔パスでプロデューサーの元へ通される
「お疲れ様です。アルバム用の曲、どうでした?」
マサイから許可が出てすぐにデータを送ったら
すぐに事務所へと呼び出された。
プロデューサーは難しい顔をしている。
「…ダメそうですか?」
「いや、本当に引退するのか?」
「引退しても今はYouTubeがありますし、歌は続けられます。今の事務所でCDを出すこともこれから検討していただけるみたいです」
今の事務所ではまだその下地がない。
でもCEOに直談判したら少しいい返事がもらえた。
「…本当にもったいないよ。どれもこれも良い出来で絞るのが難しい」
「ほんとですか?嬉しいです」
「今まで恋愛系を解禁しなかった理由がよくわかった。あの時のキスした相手が彼なんだね?」
「そうです!一昨日から付き合ってます!」
「…幸せそうで何よりだよ」
「はい。色々ありがとうございました」
なんだかんだこのプロデューサーは楽しみながらも
わたしたちを守ってくれていた。
深くお辞儀し、感謝を述べる。
「作曲の契約はするか?」
プロデューサーは作詞のみで作曲は外注だ。
専属で契約すればこの先作曲家として安定した収入を得ることができる。
「ごめんなさい。専属契約はできません」
「そうだろうね。まぁ気が向いたらコンペに出してくれ」
「わかりました。年末の忙しい時期にお時間頂きありがとうございます」
「あぁ。引退してからもいつでも遊びに来て欲しい。また会議室が必要な時は言ってくれ。
アルバムの選曲が終われば連絡する」
優しい目で見送られ、事務所を後にする。
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作者名:にゃんこすき | 作成日時:2019年5月16日 17時