...3 ページ43
メインのパスタが来て、さぁ食べようというところでAのバッグが震えた。
最初は「あとで確認します」と言っていたAだったけれど、あまりに執拗に鳴り続ける携帯に根負けしてバッグを取り上げた。不審げな顔で画面を覗き込んだAは、片手でごめんと拝んでから席を外した。
「お客様、大丈夫ですか？ お客様！」という声に振り返ると、廊下に崩れ落ちたAがウェイターに抱きかかえられていた。
簡単に言ってしまうと、その夜Aの親友が命を絶った。
複雑な生い立ちで、現在も様々な問題を抱え、もがき苦しんでいた親友をAはずっと支え続けてきたという。
けれど、カウンセラーのまねごとのようなことをしている知人に、一度突き放すべきだと助言を受けた。それを真に受けたAが距離を置くと宣言した直後の出来事だった。
残されていたメモには、距離を置くと言ったAへの恨み言がこれでもかというくらい綴られていたという。
病院へ向かうタクシーの中のAの憔悴ぶりはとても見ていられないほどだった。
Aは駆けつけた病院の廊下で、親友の母親にわたしのせいですと謝り続けていた。ぶつけようのない怒りの矛先をまっすぐにAに向けた母親から心ない言葉を投げつけられたAは立っていられず、僕が支え続けた。若作りをしたその母親にはそれすらも腹立たしかったのだろう、ここから出て行け、二度と姿を見せるなと口汚くののしった。
Aを抱えるようにして真夜中の病院を出た。あのときの星空を僕は一生忘れないだろう。
悲しいくらいに綺麗だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 458人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「登坂広臣」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
happysmile2015(プロフ) - ヒナモリさん» ぜひとも教えたいところですがログインしていないとメッセージが送れないのでぜひログインしてまたここにコメントください！ (2018年1月21日 21時) (
レス) id: 9f85cd08d0 (このIDを非表示/違反報告)
ヒナモリ - 神的な文章にドキドキワクワク+きゅんきゅんです(((o(*ﾟ∀ﾟ*)o)))できれば、続きも、読みたいので、パスワード教えて頂きたいですm(_ _)m (2018年1月21日 17時) (レス) id: 5142e599b3 (このIDを非表示/違反報告)
happysmile2015(プロフ) - ともさん» ほんと、そうですね。直己さんの新たな一面を書いてみたいけどなかなか難しい。悪人な直己さんは書けないなー。それってなんていうか、人徳、ですよねー。え、あ、がっつり悪人に書かれてるおみたろうに人徳がないわけじゃなくて…あうあう。しどろもどろ (2017年11月5日 21時) (レス) id: c74d636d6e (このIDを非表示/違反報告)
happysmile2015(プロフ) - ララさん» メッセージ送りましたが届いてますかー？ (2017年11月5日 21時) (レス) id: c74d636d6e (このIDを非表示/違反報告)
happysmile2015(プロフ) - yuina.さん» テレビ観ない人間ですが、観ます！ でもずいぶん先だね。また近づいたら教えてほしい…忘れちゃってるかも。あ、でも陸王は録画して観てる！ 本で読んで面白かったから！ (2017年11月5日 21時) (レス) id: c74d636d6e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：happysmile2015
| 作者ホームページ：https://www.instagram.com/happy_smile_2015/
作成日時：2017年10月17日 19時
