見慣れた靴 ページ45
「咄嗟に彼女って言ったけど、本当に俺の彼女にならない?」
「ごめんなさい。」
送ってくれた彼に、頭を下げる
「長年の片想い。」
「え?」
「明日からも同僚として、よろしく。それじゃ、おやすみ。」
「うん、おやすみなさい。」
雨の音がやけに響いて、その夜は眠れなかった
―― けほっ、ごほっ、・・ごほっ、ごほごほごほっ・・・・・来い。
仕事を終え、帰り際に確認した携帯
残された伝言に、焦る
「この着信から、2時間以上。急がなきゃ。」
会社近くの薬局で風邪薬、その隣のスーパーで食材を買ってタクシーに飛び乗った
一旦、自宅アパートへ向かう
「調味料に鍋、体温計でしょ。それから、ん?」
玄関の鍵が開いていて、まさか閉め忘れ?
恐る恐るドアを開けたら、見慣れた靴が転がっていた
「ここに居るの?」
慌てて寝室へ行くと、彼が眠っている
汗ばんでいる額に、張りつく髪
紅潮した頬、乾いた唇、浅い呼吸
「ひどい汗。」
「・・・ごほ、ごほ、ごほっ。」
咳き込んで、目を覚ました様子
「大丈夫?」
「・・・だりぃ。」
思った以上に掠れた声、熱上がるかもしれないな
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作者名:薫 | 作成日時:2021年5月7日 18時