拭いきれへん不安 ページ5
半年前の夏
単独イベントの仕事を終えて、翌日は休み
彼女とゆっくり過ごしたくて訪ねたマンション
エレベーターの扉が閉まりきる瞬間
前を横切った人物に、自分の目を疑う
今のって、岩ちゃん?
「まさかな。」
拭いきれへん不安を抱えたまま、俺は彼女の部屋へ
「萌花、ただいま〜。」
濡れた髪そのままで、バスルームから出て来た
「おかえり、健ちゃん。」
「風邪引くで。」
萌花の首元から奪ったタオルで、髪を拭いたる
慣れへんことは、するもんちゃうなぁ
「痛いよ、健ちゃん。優しくして。」
うなじに見つけた赤い痕
つい、拭く力が強くなってしもた
「すまん、すまん。早よ、乾かし。ビール、もらうな。」
キッチンへと急ぎ、冷蔵庫から取り出したビールをイッキに飲み干す
部屋に入った時から気になっとった、微かに匂う見知った香り
空いた缶をぐしゃっと握り潰し、足元のゴミ箱に投げ捨てた
「ふぅ〜。」
リビングのソファーに身を沈め、何気なく見たテーブルの下
落ちていたモノを拾い上げ、まさかが確信になる
もう、無理や
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作者名:薫 | 作成日時:2021年5月7日 18時