★ ページ23
「すぐ戻る。」
道を戻ってヒールを拾い、通り沿いにあったドラッグストアへ寄る。
急いで公園のベンチに・・って、あの人がいない。
前にも、こんなことがあったな。
花見の宴会場で、あの人を見失った時だ。
「・・はぁ、はぁ、全然見つからない。」
ようやく見つけ出したあの人。
桜の木の下で降り注ぐ花びらに包み込まれていた。
いつもより綺麗だな・・・ドクンッ、一際大きく胸が鳴る。
儚げで、今にもどこかへ行ってしまいそうな雰囲気。
失いそうで怖くなり、思わず大声で名を呼んだ。
「A！！」
振り返ったあの人に駆け寄り、強く抱しめた。
存在を確かめるように。
『壱馬、どうしたの？』
早くなる鼓動は、走ったためなのか。
心が惹かれる早さなのか、治まらない。
この瞬間、俺は初めて恋を知った。
『かーずま、こっち。』
声が聞こえても、姿は見当たらない。
「え、どこ？」
『こっち、こっち。』
だから、どこだよ。
とにかく声のする方へ向かう。
『壱馬、見て。』
空を見上げながら、片足でよろめきつつ立っているあの人。
「ここで、何しているわけ？」
隣に立ち、腰を抱き寄せ支えた。
『秋の四辺形。』
星を指さし、嬉しそうに笑っている。
『こんな身近で、星空が拝めるなんてね。』
ベンチに座らせた彼女の足元に膝まずく。
怪我をさせた右足をそっと自分の足に乗せ、濡れタオルで拭いた。
時折、ピクッと足が反応する。
「痛い？」
『ううん、大丈夫。』
汚れを拭えたことを確認し、消毒。
傷薬を塗った箇所にガーゼを当て、包帯を巻いた。
『ありがとう。』
「元はと言えば、俺のせいだし。ごめんな。」
『和み庵の白玉杏仁。』
和み庵は、俺たち行きつけの店で人気の白玉杏仁は、彼女のお気に入り。
「みたらし3本、追加。」
みたらしも彼女のお気に入り。
『よし、チャラにしてあげる。』
「そろそろ、帰るか。」
『家、来る？』
「行く。」
くい気味に答えた俺をクスクス笑っている彼女。
必死すぎて、かっこわりぃ。
でも今夜は、昔を思い出したこともあって、無性に彼女と居たかったから。
「笑いすぎ。ほら、行くぞ。」
彼女を背負って、通りへと向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 202人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「THERAMPAGE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
薫(プロフ) - 結城瑞沙さん» いつもコメントありがとうございますm(_ _)m ありがたく、嬉しく思っています(^_^) (2019年12月14日 0時) (
レス) id: becf62c358 (このIDを非表示/違反報告)
結城瑞沙(プロフ) - ありがとうございます、幸せです！壱馬さんにも幸せになって欲しいです。 (2019年12月13日 19時) (レス) id: 7685bfd8c6 (このIDを非表示/違反報告)
結城瑞沙(プロフ) - 壱馬さん頑張るのじゃ！ (2019年11月28日 20時) (レス) id: 7685bfd8c6 (このIDを非表示/違反報告)
結城瑞沙(プロフ) - お待ちしておりました。壱馬さん一途過ぎて眩しいです。 (2019年11月26日 0時) (レス) id: 7685bfd8c6 (このIDを非表示/違反報告)
薫(プロフ) - 結城瑞沙さん» 夜分、すみませんm(_ _)m ゆっくり更新になりますが、気長にお付き合い下さいませ(^-^) (2019年11月13日 2時) (レス) id: becf62c358 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：薫
| 作成日時：2019年11月11日 0時
