Dear my besties 4 〜from Finally〜

☆ ページ43

低く音楽が流れる部屋で雑誌をパラパラとめくっていたAさんが「さーてお風呂はいろっかなー」とつぶやいてからギクリとあたしを見た。「うわ、結花がいること忘れてた。空気みたい！」


「空気ってひどくない？」ソファに寝転がって携帯をいじくっていたあたしは思わず笑う。


「わたし、結婚ってしたことないからわかんないけど、するなら結花みたいなひとがいいな」

「あたしも同じこと思ってた！ こんなに気楽な同居人ってなかなかいないよね！」


しかもこんなに愛情があるんだから、という言葉は飲み込んだ。



バスルームに向かうAさんに「ねぇこないだ買ったあのバカ高いバスソルト使おうよ」と声をかける。


「あっいいねー。ローズとバニラとマンダリン、どれがいい？」

「ローズ」

「わたしもそう言おうと思ってた。じゃあわたしがあがったら結花もすぐ入ってね」

「はーい」


ささいなことがいちいち嬉しかった。

知らないひととたくさん暮らしてきたけど、こんなに気になるところがないひとも珍しかった。



そうだ、えりちゃんに剛典と別れたこととAさんと暮らしてることを伝えないと。あれこれと忙しくて忘れていた。



今日来たことを除けば久しぶりに剛典のことを思い出した気がする。

不気味なくらい携帯も沈黙していた。


今日店に来たのも気まぐれだろう。早速Aさんを口説いてたし。


きっと新しい彼女もできただろうし、そっちに夢中だったけどふとあたしを思い出したってとこか。




そう思ってもこころがほとんど波立たないあたしはもう大丈夫、そう思っていた。

第13章　complex emotions→←☆

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