奪取！

dash34 ページ34

☆岩’s eyes☆


連休があけて陸上部が朝練の体操をしているのをこっそり見る。


…いない。


やべ、あのうるさい関西弁と目があった！ 逃げろ！


それにしてもまじめなAがさぼるとは考えられない。なにかあったのか。

連休中に一度くらい会いたかったけどLINEは既読にすらならなくなった。


仕方なく彼女と会っていた。完全にヒマつぶし。

そのうえふとしたときにもAの顔や声が浮かんでしまい、この子とはもうダメだな、とまさにゆうべ覚悟を決めたところ。



大学の正門が見渡せるカフェに座って紅茶を飲みながらAを待つ。これはもう正真正銘、立派なストーカーだな、オレ。


授業にはもう間に合わないけど別にいいや。学校なんて関係ないし。


オレが腰を落ち着けて1時間が過ぎた頃、一台のバイクがゆっくりと走ってきて停まった。

後ろに乗っていた女の人が降りてメットを渡しながら頭をさげてなにか言う。運転していた男が女の人を蹴るまねをしてから走り去る。



女の人は足を軽くひきずって歩き始めた。


…んっ？


あれ、Aじゃないか？


なわけないか。あんなスカートをはくタイプじゃない。髪型も違う。




…いや違う、やっぱあれAだ。


アスリートのオレは足の運びというか身体の動かし方で人を見分ける自信がある。特に長距離選手のAの足の動かし方は独特だった。


あわてて店を出て追いかけ、おい！ と肩に手をかけ…ようとしてやめた。


その横顔があんまりキレイだったから。

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