奪取！

dash13 ページ13

☆A ’s eyes☆


全くストーリーが頭に入ってこない。映画館に男の人とふたりで来たことももちろんはじめてだし、こんな暗いところに腕がぶつかりそうな近くに男の人と一緒に座るのもはじめてで、緊張していやな汗をかいている。


情けない、ダメな自分が心底イヤになる。



さっきのカフェでもそうだ。

登坂く…お兄ちゃんと並ぶあすかさんがあんまりにきれいで気おくれしてしまった。優しく話しかけてくれてもどう答えたらいいか考えているうちに他の誰かが話し出すという感じで、うまくしゃべれなかった。


そのうえお兄ちゃんのかみつくような大声の話し方もこわかった。


お兄ちゃんを追いかけて、わたしたちにごめんねといいながら帰っていくあすかさん。美人で背が高くて、ミニスカートがほんとによく似合ってる。


それに比べてわたしは…そう思ったら今市くんにも申し訳なくて、うまくしゃべれなくなった。



映画館に向かいながら今市くんは優しく話しかけてくれたけど、ほとんど答えられなかった。うっかりしゃべると涙がこぼれそうで、口を結んでいた。




銃の乱射シーン。大きな音が耳触りだった。




うつむいているわたしに今市くんがささやいた。


隆二「出よ」


あぁ、とうとうあきれられちゃったな。



ホント、こんな自分が大嫌い。

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