Dear my besties 3 〜from Finally〜

☆ ページ10

「ちょっと似た境遇ってくらいでわかったようなこと言わないでよ！」


突然の大声とがたんという音に身体がびくりとした。結花ちゃんが顔色を変えて立っていた。

難しい子だな、とまず思った。


ねこが毛を逆立てている姿が浮かぶ。

毛を逆立てているのは自分を大きく見せたいから。こわがってるんだ。なにを？ こころに触れられることを。

きっとそう。



結花ちゃんはネイルと香水こそやめたけれど、冗談のような濃い化粧と巻き髪は変わらなかった。

それすらも彼女の武装に思えてくる。


「座って」


キツい声になる。まだまだだなぁ、わたし。ひとを使うって本当に難しい。わたしはいまいい勉強をしてる。


音をたててふてくされたように椅子に座る結花ちゃん。


わたしは黙ってキッチンに向かい、コーヒーを淹れた。丁寧に。基本に忠実に。


いつものように手を動かしているうちに気持ちが落ち着いてきた。インターバルを置くって、大事だ。カッとなったときこそすぐに言葉に出すことはやめよう。


一呼吸、おく。


そうこころに刻む。


結花ちゃんも同じだったらしく、こわばっていた表情が少しずつ落ち着いていくのがみてとれた。


コーヒーのさわやかな香りが立ちのぼる。


渾身の一杯をそっと結花ちゃんの前に出す。

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