Dear my besties〜from Finally〜

☆ ページ9

……なんてそこらのマンガみたいに簡単にことは運ばなかった。当たり前だけど。




迷っていたピアスとネックレスを購入してその日はそれで終わった。



その日の夜。

ひとりで食事をして、家に向かってほろ酔いでのんびりと歩きながら着ていたコートのポケットになにげなく手を入れたわたしは心臓が止まるかと思った。


そこには値札のついたブレスレットが入っていた。



留め金に結ばれたちいさなタグには＜step by step＞とある。

あの店の！



黒目がちな笑顔が浮かぶ。＜step by step 店長＞……えーとなんだっけ。


忘れちゃったけどとにかくあの店長に返さなきゃ！


動転する一方で、それにしても好みが合う店だな、と街灯の下でブレスレットをしげしげと眺めながら冷静に思う自分がいた。



それは本当に素敵なブレスレットだった。

きゃしゃな作りだけれど凝ったチェーンで、見た目以上にずしりと重量感がある。シンプルな星のモチーフにストーンが敷き詰められている。これもまた値札通り安物ではない。



こんなものを持ってきてしまったなんて……！

値札を見て改めてそう考え、一気に酔いがさめたわたしは、家に駆け込んで財布からレシートを取り出し電話をかけてみたけれど、すでに営業は終わっていた。


携帯電話をテーブルに置いたはずみに思い出した。



あ、そうだ、片岡さんだ！

そろばん五級の。



思わずふふっと笑ってからすぐに笑顔を引っ込める。


盗んでしまったようでどうにも気持ちが落ち着かず、きまじめなわたしはその夜なかなか寝付けなかった。

☆→←☆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す