【短編】掌のしわとしわを合わせて

＃ＤＢ４７、少しでも涼しくなりたいので［リク］ ページ31

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「それじゃあ、はじめます」


そういった彼女はライトで自分の顔を下から照らした。整っている顔のおかげか、真っ暗闇の中浮かび上がった整った顔は、冗談抜きで怖い。今の表現の仕方でだいたい分かったとは思うが、これから怪談が始まるのだ。

少しでも涼しくなりたい。
今日は夜になっても暑苦しくて、見かねたAがそう言い出したのだ。

話す内容はほんのわずからしいが、どうせならクーラーをつければいいのに。なんていったところで一度それと決めたら曲げない彼女には通じない話だった。


「毅樹はさ、鏡相手にじゃんけんしたことある？」

「え…？ないよ」


彼女がいきなりそんなことを訊いてきた。もちろん俺はないと即答する。だって、鏡は鏡なんだからあいこになるに決まっている。結果が判りきっているのにやるわけが無い。すると彼女はこういったのだ。


「私ね、鏡の中の自分とじゃんけんして勝ったことがあるの」


その瞬間、背筋に冷たいものが走った。



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