【短編】掌のしわとしわを合わせて (ページ28)

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＃Ｇ４９、不覚にも［リク］ページ28

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女は印象が変わりやすい。なにかワンポイントつけ加えるだけで可愛くなれたりブサくなったりする。普段冴えないやつでもこれはあり得る。それは解ってた。だから敢えて言い訳させてもらう。

「不覚にも可愛いかったんですって…」

「だからっていきなり女の子の唇奪うバカがいるかっての」

長野さんのグサッと胸に刺さる言葉に俺はまたテーブルに突っ伏す。ゴン、と鈍い音がした。ここはとある居酒屋。インドア派の俺がここで人と一緒に飲んでいるのには、ちょいとばかし訳があった。ガバッと起き上がって、置かれてあったビールジョッキを一気に空にした。そして、自然にこぼれる溜息。あかん。罪悪感半端ない。

事の始まりは、いつもはメガネで冴えないAがメガネをかけずに顔をだしたのだ。話を聞けば、前々からメガネが邪魔でどうしたものかと考えていたら、友人にコンタクトを勧められたらしい。＿＿＿＿半年も前の話らしいが。

で、こっからが本題。

冴えないっぷりは変わらなかったが、いつもより大きく見える目に上目使いされて、不覚にも可愛いと思ってしまったのだ。
だからだろうか。衝動買いならぬ、衝動キスをしてしまったのは。

「で？いきなりのことにびっくりしたAちゃんに横っ面を思いっきり引っ叩かれた訳？」

「……はい…」

今も俺の頬には赤く痛々しくモミジの跡がついている。というのはさっきお手洗いで確認したからだ。引っ叩かれてから数時間経つのにまだ残っていた。あいつ、どんだけ強くぶったんだよ…。

「でもさー慎吾君。好きな人にいきなりちゅーされたら流石にAちゃんもびっくりするよと思うよ？」

「は？どういうことすっか？」

すると長野さんは得意げな顔をして、「まあ仮にも相談を受けている側ですから」と言いビールを飲む。俺がその言葉の意味が解ったのと、彼女から携帯に電話が入ったのはほぼ同時だった。

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