ハッピーエンドはまだ遠く (ページ6)

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「ほな、かんぱーい！」

　俺の合図でグラス同士がぶつかる。
そのままお酒をぐっと流し込んだら、1週間の疲れも吹き飛んだ気がした。

「うまっ」

　そう聞こえてきて、声の主の方に目をやれば、ちょっと口元を隠しながらも笑顔の目黒くん。グラスのお酒は結構減っとって、意外と飲むんかなーと思って聞いてみる。

「目黒くんは結構飲んだりするん？」
「そうっすね。家ではあんま飲まないですけど、外だったら結構飲む方かも」

　そう言った目黒くんは嬉しそうに笑顔で続けた。

「仕事慣れるまで、家帰ったら結構疲れてたし。全然飲んでなくて、久しぶりなんで楽しいです。それに、向井さんとだし」

　俺も楽しいで、とちょっと恥ずかしさを隠しながら返す。ずっと笑顔の目黒くんはキラキラしとって、眩しかった。こういう人が喜ぶこと、さらっと言えてまう子なんやなって、この2週間でわかった。

　照にいと話す機会もちょっとだけあって、その時も筋肉が凄いとかめっちゃ褒めとった。照にいも嬉しそうで、俺とは違う方法で、人を笑顔にできる子なんやなって思う。

　その時ちょっとだけ感じた、もやもやの正体はわからんままやけど。

「ん、これすげぇ美味い」

　運ばれてきた料理を突きながら、目黒くんが言う。

「やっぱ向井さんのおすすめの店来て、正解でした」

　相変わらず目黒くんの笑顔は眩しい。
もうちょっと仲良くなれたら、近付けたら、その眩しさにも慣れるかも。そう思って提案してみる。

「敬語、やめへん？」
「え？良いんすか？」

　あ、ちょっと困った顔しとる。

「敬語やったらちょっと壁感じるし、なんか変な感じするし」

　俺も照にいに敬語使ってないし、と少しだけの安心材料も提供して笑ってみせる。

「んー……、じゃあ遠慮なく？」
「うん、そーしてくれた方が嬉しい！」

　俺の言葉でふにゃりと笑う目黒くんに、また心臓がうるさい。もー、全然慣れへんやん、と心の中で自分に悪態をついた。

「ね、向井さんは」

　今日はお酒のせいか、目黒くんがよー喋る。敬語とタメ口との間を行ったり来たりしながら、会社に入った理由とか、大学時代のこととか、いろいろ話した。

　時間が経つんは早いもんで、目黒くんから完全に敬語が消えた頃。その頃には日が変わろうとしとったから、今日はそこでお開きになった。