ハッピーエンドはまだ遠く (ページ37)

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　角を曲がりながらそれを確認して、少し行ったところで立ち止まる。

「ごめん、大丈夫だった？」

　少し名残惜しいけど、手を離して聞く。

「うん、助けてくれてありがとう。俺の方こそごめんな」

　そう言った康二くんはどこか悲しげで、控えめに笑顔を見せた。

「康二くんは悪くないよ。俺がもっと早く来てれば良かったのに、ごめん」

　俺がもう一度謝ると、康二くんは小さく首を横に振って俯く。また抱き締めたくなる衝動を抑えて、何か言いたそうな康二くんをじっと待つ。

「……俺、あんなん初めてやったし、何回断ってもしつこくて、どうしたら良いかんからんくて……。目黒が来てくれて、助けてくれて、……嬉しかった」

　康二くんは下を向いたままで、表情はわからない。

　だけど、嬉しかったって言ってくれたことと、さっきの行動を否定されなかったことに、俺も嬉しくなった。

「俺も康二くんに頼りにしてもらえるのは嬉しいし、何か困ったことがあればいつでも言って。もう遠慮するような仲じゃないでしょ？」

　これはやましい気持ちとかなしに本心で、俺に何かできることがあるならさせて欲しい。

　多分、康二くんは自分のことは後回しに他人を優先して、何かあってもその笑顔の下に隠してしまう人だと思うから。

「うん、ありがとうな」

　やっと顔を上げてくれて、そう言って笑ったけど、これも多分強がりで。まだ俺を頼ってくれることはないんだろう。

　でも、すぐに隠すんじゃなくて、ほんの少しだけでも俺に弱いところを見せてくれるのは、自惚れても良いのかな。

「行こっか」

　笑顔で康二くんにそう言えば、「そうやね」っていつもの笑顔で返ってくる。

　今は何も触れないでいよう。康二くんの力にはなりたいし、守りたいけど、今はまだ力不足だ。

　まずは隣にいられる努力をしよう。離れていてもそばにいられるようになりたい。

　そう決意して、康二くんと並んで歩き出した。