ハッピーエンドはまだ遠く (ページ29)

今日:15 hit、昨日:0 hit、合計:36,517 hit

. ページ29

＊4

　目黒が部屋を出て、とりあえず足音が聞こえんくなるまで待つ。

　多分もうこの階にはおらんかなって、音だけでもう一回確認して鍵を閉めた。

　部屋の方に戻って、片付けからやろかなって考えて、部屋を見渡す。そこには確かに、俺以外にもう一人おった痕跡がある。

　祭りの後の静けさみたいな、ちょっとした喪失感があって、また急に寂しくなった。

「俺こんな女々しかったっけ……」

　とか、呟いてしもて、余計に辛くなる。あかんあかん、って振り払って、ちょっとだけ残ってしもとったお酒を一気に流し込んだ。

　——ピコン。

　小さい通知音がして、テーブルの上で光っとるスマホを慌てて取る。

『今マンション出たよ』

　画面には目黒からのメッセージ。すぐにトーク画面に切り替えて返信した。

『気つけて帰るんやで！』
『電車も乗り過ごしたらあかんよ！』

　2件続けて送って、一旦画面を暗くする。

「よし！片付けよか！」

　目黒からちゃんとメッセージがきて、なんかちょっと元気になったから、気合入れて片付けに取り掛かった。

　テーブルの上のもんを、とりあえずキッチンに持って行って、テーブルを拭く。今から洗いもんやな、ってキッチンに向かったら、ポケットのスマホが鳴った。

『片付け任せちゃってごめんね』

　こんなとこでもちゃんと優しいんやな、ってちょっとほっこりしながら、大丈夫やでって返信する。

　ゆっくり返信したいし、早よ明後日の用意もしたいから、ちゃっちゃと洗いもん終わらしてまお。

　今までで最速ちゃうかってぐらいのスピードで、洗いもんを終わらした。でもちゃんと綺麗に洗って、今は水切りのところで乾燥中。ゴミも仕分けて括ったし、片付けは完璧やな。

　一応、もう一通り確認して、ソファに座る。ポケットから出したスマホには、3件の通知。

　ちなみに全部目黒からで、ちょっと前に電車乗ったって報告と、ほんまにさっききたのが2件。

『ここ行きたいんだけど、どう？』

　っていうメッセージと、多分、ここ、であろう場所のURLが送られてきとった。

　そのリンクを開いて、場所を確認する。うん、ここやったら大体なんでも揃いそうやな。

『いいやん、ここ行こ！』

　そう送ったらすぐ既読ついて、最寄駅の名前と約束しとった時間が送られてきた。