ハッピーエンドはまだ遠く (ページ21)

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胸の内(mm) ページ21

＊1

　これはどういう状況なのか。

　好きな人が俺の隣で寝てる。しかも身体はくっついてるし、腕はぎゅっと絡み付いている。顔は覗き込めば何とか見えるけど、その勇気は俺にはない。

　ただでさえヤバいこの状況で、寝顔なんて見てしまえば、良からぬことをしてしまいそうで。

　隣で眠る康二くんの寝息が聞こえてきたのは、5分くらい前だろうか。その間、俺は心の中でヤバいと落ち着けを永遠と繰り返している。

　触れているのに触れられない、そんなもどかしさ。

　今いる、この家の主人に眠り込まれてしまえば、この後どうすれば良いのか少々困る。もう少し経ったら起こしてみよう。

　少しだけ冷静な思考が戻ってきたところで、スマホに目を落とす。

　明日からの予定は、まだちゃんと決まっていない。少し前まで見ていた、旅行先の候補をある程度絞ってしまおうかと考えた。

　開いたままになっていた記事には、いくつか見た内の古風な温泉街。

　個室に温泉が付いているタイプの宿も良いけど、普通にホテルとかにして、温泉街をメインで巡るのも良いかもしれない。そう思って検索方法を変えてみる。

　部屋でずっと二人きりよりも、外で楽しんで部屋に帰るくらいの方が良い。部屋にいるのが嫌とか、気まずいとか、そういうネガティブな考えはない。

　いや、でも、気まずいのはあるかも。

　好きな人とずっと二人きりというのは、いろいろと身体に悪い。しかも温泉旅行だなんて。今でさえ、かなりヤバい状況だというのに。

　男女なら良かったのかもしれないが、あいにく俺も康二くんも男な訳で。何かあったら嬉しいけど、それがもしダメだったとすれば、もし拒絶されたとすれば、もう元には戻れないだろう。

　気持ちを直接的に言葉にするつもりはない。やりすぎない程度に、行動では表すつもりでいる。

　もしそれで、康二くんも同じ気持ちになってくれれば、その気持ちが確実なものであると断言できれば、その時は伝えても良いかもしれない。

　でも、もし、もしも、この気持ちが叶ったとして、ずっと一緒にいられるとも限らない。

　今は同じ職場で働いてるけど、多分俺は大阪ではなく、違うところに配属される。ある程度の勤務地の希望は聞くと言われたが、会社の方針として地元が優先とも言っていた。同期には関西出身の方が多かったし、そいつらでその枠は埋まるだろう。

　そういう訳で、俺が康二くんといられる時間は限られていた。