ハッピーエンドはまだ遠く (ページ3)

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「目黒蓮です。宜しくお願いします」

　クール、って感じの話し方で、挨拶も短め。声もえぇ声で羨ましいわってちょっと心の中で拗ねてみる。

　目黒くんは元の位置に下がりながら、邪魔やったんか顔にかかっとった前髪をかき上げた。

　…………。

　え、何……？
なんでか心臓の辺りがきゅっとなって、一瞬苦しくなったような気がする。

　確かに何しても絵になる子やなーとは思ったけど、うん、それはない。俺も目黒くんも男やし。
多分、あんなシュッとしたかっこえぇ子、見慣れてないから、男の俺でも心臓がびっくりしたんやろな。

　とか、なんとか、一人で考えとったら照にいの声で現実に呼び戻された。

「康二、呼ばれてる」

　誰に、って聞こうと思ったら、上司がまぁまぁデッカい声で喋ってる中に俺の名前が聞こえてくる。

「向井はうるさいけどえぇやつやから、分からんことあったら遠慮せんと頼りや」

　あ、これは去年見た。めっちゃテキトーに教育係つけていくやつ。去年は照にいが当っとった。

「誰がうるさいんすか！まぁでも、先輩に任しときー！」

　とりあえずいつものテンションで叫ぶ。周りは爆笑。なんやかんやイジってもらえるんは嬉しい。

　正直、俺に教育係ができるかどうか自信ないけど、仕事教えるだけやし、なんかあれば照にいに聞けば大丈夫やろ。上司の話は聞いてなかったから、どの子につくかわかってないけど。

　新人さん達がばらばらと、指定された人のところに散っていく。俺はどの子とやろな〜とキョロキョロ見回す。喋りやすい子やったらえぇなって思っとったら、俺の前で誰かが立ち止まった。

「目黒です。よろしくお願いします、向井さん」

　え、と思わず声が出る。目の前には整った顔で不思議そうにする目黒くん。「どうしたんですか？」って聞かれて、慌ててなんでもないよって笑顔を作った。

「よろしくな、目黒くん」

　はい、って答えた目黒くんはちょっとだけ笑顔になっとって、うわ、イケメンやな。って心の中で思った。