ハッピーエンドはまだ遠く (ページ20)

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　いろんな場所に切り替わっていく画面を、ぼーっと眺めとったら、目黒が手を止めて言う。

「こことか、この時期は割と空いてるみたい」
「泊まりで温泉とか行ったことないし、ちょっと行ってみたいかもしれん」

　結局、場所は把握できてなかったけど、スマホの中にある温泉街が楽しそうに見えて、思っとったことを素直に伝えてみた。

「え、泊まりでいいの？」
「んぇ？あかんの？遠出言うとったから、泊まるんや思ってた」
「いや、うん、そうしよ。泊まりの方がゆっくりできるし、休みもまだまだあるし」

　ちょっと焦った感じの目黒に、また朝の疑問が蘇ってきて、不安になる。酔っ払ってるんやから、そんなん思い出さんでえぇのに。

　でも、一回出てきてしまったもんはどうしようもなくて、寧ろ膨らんでいく。

「なぁ、めぐきゅん」

　目黒とくっついてない方の手で、ちょっとだけ目黒の服の袖を引く。どうしたの、ってスマホを弄る手を止めた目黒が、俺の方を向く。

　でも隣同士やし、俺はちょっと下向いてるから顔は見えへん。聞くんやったら今しかないやんね。

「俺なんかとで、えぇの？せっかくの休みやし、旅行やで？彼女さんとかおるんやろ？」

　袖を掴んでる手に力が入ってまう。どうか、バレてませんように。

「……いないよ、彼女とか。俺は康二くん、なんか、じゃなくて、……康二だから、一緒に行きたいんだけど」

　そんなこと気にしなくて良いのに。ぽつりと呟いて、目黒はまたスマホに目線を戻した。

「そっか、ありがとう……」

　お礼を伝えたら、さっきの目黒の言葉が更に俺の中に落ちてきて、ふわふわした気持ちになる。

　なんか嬉しくて、俺とくっついてる方の目黒の腕に、自分の腕をぎゅっと巻きつける。

　普段やったら絶対、恥ずかしくてできひんけど、今はこのふわふわした気持ちと、お酒で程よい気分のせいにしとこうと思った。