ハッピーエンドはまだ遠く (ページ13)

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＊5

　スーパーから俺の家への帰り道。隣に並ぶ目黒くんが重たい方の袋持ってくれて、俺の方にはほんまに軽いもんしか入ってない。

「俺がお邪魔するんだから、向井さんはそっちでいーの」

　って目黒くんは言う。
家の前まで帰ってきて、カバンから鍵を探しとる時も「ゆっくりでいいよ」って、さっと俺の手からスーパーの袋を取った。もし俺が女の子やったら、イチコロなんやろなって思う。

「ちょっと散らかっとるけど、気にせんといて」

　俺がそう言うと、気になる物があったら気にしちゃうかも、ってまたイジられた。

「お邪魔しまーす」

　どうぞ、と言いながら、先に部屋に入って電気をつける。ちょっと広めの1Kやから、ゆっくりはしてもらえるかなと思う。

「普通に綺麗だし、結構広いじゃん」

　ソファの前に置いたローテーブルに、スーパーの袋を2つ置く目黒くん。

「まあ、テキトーにゆっくりしてってや」

　そう声を掛ければ、ありがとうって笑顔で言われた。人を呼んだことない部屋に目黒くんがおって、あの笑顔で笑いかけられたら、なんかちょっとくすぐったく感じる。

「とりあえず、荷物置いたら手洗いうがいやで！」

　恥ずかしさを紛らわすように言えば、はいはい、とまた笑顔で返ってきて、俺も笑顔になった。洗面所の場所を教えて、自分はキッキンで手を洗う。部屋の方に戻って、買ってきた物を仕分けとったら、目黒くんも戻ってきた。

「何作ってくれんの？なんか手伝う？」

　目黒くんの彼女ってこんな気分なんやな、ってそこまで考えて、慌ててその考えを振り払う。

「目黒くんはえーの。お客さん、やろ？」
「そう？まあ、俺料理できないし、手伝っても邪魔なだけかも」

　そう言って笑う、キラキラな目黒くん。

「じゃあ、ジュースでも飲んで待っとく」
「え、お酒も買ったんやから、飲んでたらいいやん」
「んーん。向井さんと一緒に飲みたいから、待ってる」

　また目黒くんの発言でドキドキさせられる。ほんま人の気ぃも知らんと……。

　いや、俺の気持ち、って、何やろ。

「そ、っか。ほな、はよ作ってまうわな！」

　俺はその場から逃げるように、テーブルの上に散らかった物をかき集めてキッチンに向かった。