ハッピーエンドはまだ遠く (ページ2)

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　4月と言えば、新しい生活が始まる季節。
まあ、俺自身は特にそんなこともなく。でも新入社員は入ってくるから、ちょっとだけ新しい、って感じはする。

　俺が働いてる会社は、めちゃくちゃ大きいって程でもないけど、ちょこちょこ支店もある。東京にもあるくらいやから、大きいっちゃ大きいんかな。
で、俺が勤めてるのは大阪の本社。大学とかは東京やったけど、実家は大阪やし、なんとなくこっちに就職した。

　大阪は本社やから、この時期には、数は少ないけど新入社員のほぼ全員が研修でくる。3ヶ月くらいおって仕事大体覚えたら、そこから各地に配属されるって感じやな。

　ほんで、今日はその新入社員の子達が初めて出勤する日。去年初めて後輩ができたけど、なんかあんまり仲良くなれた子はおらんくて、今年はどうやろって、ちょっとだけ楽しみにしとった日でもある。

「おーい、お前ら新人紹介するぞー」

　ドアを開けながら上司が言う。その声で事務所におったみんなが、のそのそ立ち上がる。隣におった照にいはちょっと不機嫌そうな顔。朝が弱いからいつものことやけど、初めてでこの顔は怖いで、と今から入ってくる新人さん達が少しだけ可哀想になった。

「失礼します」

　何個もその言葉が聞こえて、順番に新人さんが並んでいく。みんな緊張してそうな顔やなぁって、ちょっと微笑ましくなった。

「じゃ、ひとりずつ軽く自己紹介してか」

　新人さん達を連れてきた上司がそう言うと、俺に近い方の端から順番に自己紹介が始まる。

　自分の番で一歩前に出て、名前言うて、軽く挨拶して、また下がる。そんな新人さんを何人か見ながら、全員の名前覚えられるかなーとか考えとったら、もう最後の一人らしい。

　その子は俺から一番遠くて、ちょうど見えへん位置におったから、前に出てきてやっとわかる。背ぇ高いんやな。顔は前髪のせいであんまり見えへんけど、なんとなく雰囲気でモテそうな子やなーと思った。