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F side
F「お前、このままでいいの」
K「…いいも何も、俺には何もできないから。もう、そういうものだから」
諦めたように、自分をあざ笑うかのように笑みを浮かべていたその顔には、本人は気づいていないだろう寂しさが浮かんでいた。
F「お前ってなんか子供らしくないな」
K「そうかな」
"大人っぽい"のではなくて、"子供らしくない"。
大人に甘えたり、そうやって振る舞える環境がなかったんだ。
きっとこいつにはまだ、子供でいられる場所が必要だ。
俺は自室へ戻り、あることを調べ、即席で作った資料を印刷した。それをこいつへと渡す。
K「なに…?」
F「これ、この辺で評判のいい施設。ここに助けを求めれば、きっと動いてくれる」
K「え…?」
F「お前はここに行け」
K「なんで…」
F「……金が手に入らないならお前に用はないんだよね」
実際、そうだ。
目的が果たせないのならこいつがいたところで意味がない。
こいつには愛される場所が必要だ。
不安げに俺を見上げているこいつを見て、さらに強くそう思った。
F「これから俺は出かけるから」
K「え、うん…」
F「ほら」
こいつの足についている枷をはずしてやると突然の出来事に驚いたようにこちらを見つめたまま動かない。
F「お前は自由だ。このまま家族の元へ戻ってもいい。ただ、他にも選択肢はある。今教えたところならもっとお前らしく生きられるかもしれない」
K「え…」
F「お前自身が選べ、自分の意思で」
K「…」
そのまま黙り込むそいつを横目に俺は部屋を出た。
あいつが幸せになれる道をあいつ自身で選んでほしいと思った。
短い人質との生活もこれで終わりだ。
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作者名:あかつき。 | 作成日時:2023年5月31日 0時