復讐の先に (ページ8)

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K side

しばらくして弟が生まれた。

俺が薄々感じていた通り、両親は弟につきっきりになった。

父親にとっては初めての実の息子なわけで。

弟に罪はないしかわいい、好きだなとも思う。弟の面倒もちゃんと見たし、弟が憎いという感情にはならなかったけれど、寂しい気持ちだけがそこに残った。

いつの間にか新しい父親は新しい社長になっていて。

学校にいっても、俺は大企業の社長息子というレッテルを貼られ、それに取り憑かれていた。

だから、それぞれの親にそのことを伝えられているのか、みんな俺に変なことはできなかった。

最初はみんな一緒に遊んでくれていたのにいつの間にか俺の周りから人は離れていった。

別にいじめられているわけではなかった。

同級生たちがこちらをみて遊びたそうにしているときだってあった。

でも小学生にとって親は絶対的な存在だ。いつだって正しい。

そんな親に"俺とは関わるな"なんて言われてしまったのでは俺にはもうどうしようもできない。

昔のような気のおけない友人ができることもなくなった。

家に帰るとテーブルの上にはいつもお金が置いてあった。

そのお金で夕食を買いに行き、一人で食べる。

お金に困ることはなかったけれど、母親の作る温かい料理を食べることはなくなった。

けれど、まだ何も用意されないよりはましだと思うことにした。

俺は普通で良かったのに。

貧しくたって、おもちゃがひとつもなくたって、普通の家族でいられれば良かったのに。

ただ、愛されたかっただけなのに。

藤ヶ谷に誘拐されたのはそんなときだった。