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K side
次の日、目が覚めたのはいい匂いが漂ってきたからだった。
そして、昨日と同じくテーブルに向かい合わせになって座り、ご飯を食べる。
なんて、あたたかいんだろう。
男は言葉少なながらも、俺のために料理を作ってくれて、俺を気にしていてくれて。
もしかしたら俺はここにいるほうが幸せなんじゃないだろうか、なんて思ってしまう。
F「今日、電話するから」
端的に言ったその意味は詳しく聞かなくても理解できた。
F「お前の声を聞かせろとか姿を見せろって言われたら、お前に刃物突き立てて昨日みたいに脅すから、リアルないいリアクションとってくれよな」
あ、昨日のあれ、練習だったんだ。
というか、今の発言からも本気で俺のことをころそうとか、脅そうとか、思ってるわけじゃないみたいだ。
実はこの男、根はいい人なんじゃないのか。実際に罪を犯しているからそうとは言い切れないけれど。
この一晩でいつの間にかこの男への恐怖心はなくなっていた。
ただ、こんなひとでも大金を前にすると、罪を犯してしまうのかと少しだけ悲しくなった。
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F「おい」
しばらくたって、藤ヶ谷がやってきた。少しだけ不機嫌な様子でぶっきらぼうに言う。
F「お前の親、どうなってんの」
この様子だとやっぱりうまくいかなかったみたいだ。
思わずため息混じりに言葉がこぼれる。
K「心配してなかったでしょ」
F「…わかってたの」
K「俺、愛されてないから」
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作者名:あかつき。 | 作成日時:2023年5月31日 0時