復讐の先に (ページ28)

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F side

俺は身代金目的での誘拐をしたということで3年間警察にお世話になることが決まった。

罪を償うために真面目に過ごした。

宏光と暮らしたあの時間がなんだか恋しくなるときもあったけれど、思い出として大事に心にしまっている。

服役してから驚いたことがひとつあった。

刑務所にはいってからしばらくして、テレビから流れてきたのは大企業の社長が薬の売買を斡旋していたというニュースだった。

聞き覚えのあるその内容に視線を向けるとやはり思った人物だった。

匿名の告発をうけ、詳細の調査をしたところ発覚したらしい。

社長は捕まり、過去に社員に罪を着せたことや長期間行っていたということで罪は重くなりそうだという内容だった。

なんだ、こんなことでよかったんだ。

どこか腑に落ちたような、すっきりした気持ちになった。

俺は復讐に囚われていた気がする。

こうして悪事が明るみになり、悪事をはたらいた人が罪を認め、償う。それだけでよかったんだ。

そこでふと疑問が生まれた。

なぜ今になって急にこんなニュースが流れてきたのか。この話を知っているのは…匿名の告発ってもしかして…。

ふっと笑みがこぼれる。

誘拐犯のためにここまで動いてくれる被害者なんて普通はいないだろ。

宏光、今どうしてるかな。

父親が逮捕されてきっと会社は大変なことになっているだろう。宏光の家族は大丈夫だろうか。

…きっと大丈夫だ。

あのときに会った母親の言動からも宏光への愛がうかがえた。

きっと、ちゃんと愛されている。幸せに暮らしていける。

あの人たちならちゃんと家族になれる。強くそう思えた。