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K side
近づいてくる足音を聞きながら、せめて1番安全なところに、と入り口から一番遠い部屋の隅で丸くなった。
足枷から発せられる微かな金属が擦れる音に、おまえは逃げられないと言われているようだった。
?「あ、起きた?」
K「…」
?「もしもーし、聞こえてる?」
K「…」
部屋の隅で体育座りをして俯く俺に男が声をかける。
声からしておそらく俺を誘拐した本人であろう。
?「あれ、足赤くなってるじゃん。もしかしてこれ、外そうとした?」
K「っ…」
?「あーあ、痛そう」
K「っ触んな!」
俺の足をさする男に、思わず顔を上げ、手を払った。
男は黒いニット帽にマスクをしていて顔の全貌を見ることはできない。
だが、瞳の奥には俺を心配しているような色が見えた。
こいつが、誘拐犯なのか…?
そう思ったのも束の間、男は小さなナイフをとりだし俺の首筋へと、刃をあてた。
ひんやりとした金属の感触がダイレクトに伝わる。
急に向けられた殺意、銀色の切先に思わず固まる。
男はすべての感情をころしたような顔をして抑揚のない声色で言った。
?「逃げんじゃねえぞ。お前は今日から人質なんだよ」
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作者名:あかつき。 | 作成日時:2023年5月31日 0時