復讐の先に (ページ16)

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K side

吐ききれたからか、少しだけスッキリした気がする。

だんだんと荒かった呼吸も落ち着いてきたけれど、それと同時に大変なことをしてしまった事実を実感し慌ててしまう。

K「藤ヶ谷ごめっ…、手汚した…」

F「いいから」

K「でも汚いっ…」

F「俺は平気だから、宏光は？大丈夫？もう気持ち悪くない？」

藤ヶ谷は汚れてしまった手なんか気にもしていない様子で俺を心配していた。

優しく背中をさすってくれていた。

それだけで先程の涙とは違う涙があふれそうになる。

大丈夫、そう言いかけてやっぱりやめた。

K「ちょっとだけ…でもだいぶ収まった」

F「そっか、よかった」

テキパキと俺の口元を拭いてくれたり、水を用意してくれる藤ヶ谷を俺は動けずに見ていることしかできなかった。

F「ふと起きたら苦しそうな声が聞こえてびっくりしたよ」

K「ごめ、起こすつもりじゃ、」

F「そうじゃなくて」

K「っ…」

F「こういうときは普通に俺のこと起こしてよ」

K「え…」

正面から藤ヶ谷に抱きしめられる。

突然のことに驚いたけれど、俺よりも大きな藤ヶ谷の体にすっぽりと収まると、あたたかくて、優しくて。

背中をぽんぽんと叩く藤ヶ谷に、動くことができなくて黙って抱きしめられたままでいた。耳元で藤ヶ谷が言う。

F「宏光はまだ子供なんだから。無理しないでいいんだよ。もっと、頼っていいんだよ。」

K「でも、迷惑かけられない、」

F「迷惑もかけていいから。というか、俺にとっては全然迷惑なんかじゃないから」

F「大丈夫、大丈夫。俺がいるから」

背中をさすり、宥めるように言う藤ヶ谷に、普段の俺なら子供扱いするなとか、文句が言えたのだろうが、今の俺の口から出るのは嗚咽ばかりだった。

別に悲しかったわけじゃない。
寂しいことにもとっくに慣れていた。

なのに、なぜだか涙が止まらなくて、しばらくそのまま藤ヶ谷の肩を濡らしていた。