復讐の先に (ページ12)

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K side

俺は今、誘拐犯と一緒に暮らしている。

藤ヶ谷に足枷を外されたとき、やっと自由になれた、やっと帰れる、そう思った。

でも、藤ヶ谷が出ていった部屋で一人。

もう自分の足で帰れることが分かっていたけれど、足は動かなかった。

鍵のかかっていないドアを見つめて、短かった藤ヶ谷との生活を思い出す。

俺がずっと欲しかったものがここにはあった。

一緒にご飯を食べたり、話したり。"そんな些細なこと"、と周りの人たちは笑うかもしれないけれど、俺にとってはすごく大きなことだった。

この暮らしを手放したくなくなってしまった。

だから、俺は自分の意思でここにいることを選んだ。

藤ヶ谷はいつも朝は同じ時間に家を出て、夕方の同じ時間に帰ってくる。ア
ルバイトとして働いているみたいだ。

もともとどこかの会社で社員として働いていたこともあったみたいたけれど、合わなくて辞めてしまったらしい。

苦い思い出のように話すからあまり詳しくは聞けなかったけれど。

藤ヶ谷は最初に、「アレルギーとか嫌いな食べ物ある？」なんて聞いてくれた。それからいつもご飯を作ってくれる。

K「藤ヶ谷、今日のご飯もめちゃくちゃおいしい！」

F「そう？ありがと」

K「へへっ」

そして、最初の頃よりたくさん笑ってくれるようになった気もする。うれしい。

この時間がとても好きだ。ずっとこんな時間が続けばいいのに。