20car. ページ21
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私の言葉に、目の前の彼は仮面の下の瞳を大きく見開いた。そして参った、と言わんばかりに息をつくと口元に笑みを浮かべる。
「……意地悪なお方だ。私が名乗らずとも分かっておられるんでしょう？」
「…っ！」
先程までとは違う声色に、肩が跳ねた。この声は、あの晩聞いた声。
そう____怪盗キッドのそれ。
「やっぱり、あなた……っ！」
自分の中でモヤモヤとしていた疑惑が、確信に変わる。そして、同時に指輪の存在を思い出した。
ハッとして、彼に繋がれている指先に視線を向ける。そこには、しっかりと紅く輝く指輪が嵌っていて安堵のため息をつく。
そんな私を見た彼は、クスリと笑うと繋ぐ手に力を込めた。
「ふふ、指輪なら取っていませんよ」
「…どうして、」
どうして、なんて奪われる側が聞いていいことではない。だけど、純粋に気になってしまった。
すぐ目の前に獲物があるのに。なんならソレに触れてさえいると言うのに。
天下の大怪盗が、みすみす逃すものなのか？
「えぇ、まあ……私もこの時間くらいは身分を忘れて楽しみたいのですよ」
そういう舞踏会なのでしょう？と穏やかに笑みを浮かべると、私の口元に細くてしなやかな人差し指を立てた。
「今は、何も言わずに私と踊っていただけませんか？」
そう言った彼が余りにも儚くて。背徳感に狭まれながらも、頷いてしまった。
一体、この人は何者なのだろう。
目を伏せてしまったその顔を、ぼうっと見つめている。……キレイ、なんて思ってしまって、途端に顔が熱を帯びる。
どうか、気づかないで。
そんな私の願いも届かず、彼のキラキラとした瞳が私を捉えた。
「……っ、あ、」
焦りに声が漏れてしまう。
違う、と否定の言葉を口にしたかったのに音にならなかった。
しかし、彼は私を見て満足そうに微笑んだだけで何も言わなかった。
そして曲も終わってしまい、彼は私の手をそっと離す。
「とても有意義な時間でした」
「え、あの……っ」
そのまま去ってしまいそうな彼に手を伸ばしてしまう。どうしてこんなことしているんだろう。
伸ばした手をそっと掴まれる。
そして恭しく
「……レディ、どうかお気をつけて」
目を伏せたまま、そう言った。
どういう事かと返そうと思ったのに、瞬く間に彼は群衆に消えてしまう。
____指輪を盗みに来たはずのあなたが何故私に忠告を？
私はその場に立ち尽くした。
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天桜＊(プロフ) - Tiinaさん» コメントありがとうございます！嬉しいです！！投票1回までなのが切ない……！！頑張ります！ (2019年6月11日 20時) (
レス) id: 4b54fd1f63 (このIDを非表示/違反報告)
Tiina(プロフ) - どうしよう、投票しようとしたら既にしてあった。私こういうのもだいっすき！頑張ってください！楽しみにしてますね！ (2019年6月11日 20時) (レス) id: f759a37db1 (このIDを非表示/違反報告)
天桜＊(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！中々更新が出来ないのですが、期待に応えられるように頑張ります！！ (2019年6月10日 18時) (レス) id: 4b54fd1f63 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - おもしろいです！これからも頑張ってくださいね！ (2019年6月10日 16時) (レス) id: 0606bdde72 (このIDを非表示/違反報告)
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