-S- loving you. (ページ50)

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「どうして…あの子は平野を庇ったりなんか」

「西野さん、…もしかしたら、Aちゃん、病気かもしれません…
誘拐や監禁による病気があるんです」

「え…？」

「…ストックホルム症候群って知っていますか？」
(※実際にあります)

「ストックホルム？…いえ…知りません」

「精神的な症状のひとつで、被害者が加害者と長い間時間を共有すると、
加害者を庇ったりするんです」

「そんな病気が…あるんですか？」

「はい…加害者に依存し、庇う。
一種の恋愛感情に似ているそうなんです。

でも、時間が経てばそれは激しい憎悪に変わったりするそうです」

「一時的…なんですね
…ならよかった…」

私が病気だって

まさか

ふざけないでほしい

紫耀は、ただの殺人者なんかじゃない
猟奇的なシリアルキラーでもなければ、サイコパスでもない

ただの、"過ちを悔いる青年"なのに

きっと紫耀にそう言ったら、
ふっ、と笑って私に馬鹿だなって優しく言うんだ

叫びたい気持ちを抑えて、病室の扉を開ける

「おかえりなさい、Aちゃん」

「A…」

何も言わずベッドに潜り込んだ

「A…お母さん、着替えとか持ってくるから一度家に帰ってまた来るわね。何か欲しいものあったら、連絡してね…」

優しく言う母に私は布団の中で小さく返事をした

母が出ていくと、それを待っていたかのように口を開く佐藤刑事

「Aちゃん、お母さん、一人娘が帰ってきて安心してるのよ」

そんなのはわかっている

私は、母にとってたった一人の娘
私にとってもたった一人の母

「…佐藤さん」

「ん？なに？」

「…平野…紫耀…、は、今どうしているんですか？」

「今は、取り調べ中よ」

「…会うことは、出来ないんですか？」

「…そうね…
容疑者であるうちは、誰とも面会は出来ないことになってるの。法律で決められているのよ」

『そ…うですか』

佐藤刑事は、困ったように眉を下げると、
優しく肩をポンポンとしてくれた

「さ、ゆっくり寝なさい。
明日異常がなければ家に帰っていいから。ね？」

『…はい…ありがとうございます…』

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