-S- loving you. (ページ39)

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39. ページ39

＊＊＊

彼の闇に触れてしまった

こんな形で、
知ることになってしまった
それは私にとってショックすぎた

彼が帰ってきたらどんな顔して会えばいいんだろう…

彼の口から直接聞きたい

だけど、彼は思い出したくないかもしれない

そうして時間は無尽蔵に過ぎていく

どれくらい自分がテレビの前で、
ぼうっとしていたかわからない

ただただ早く紫耀が帰ってきてほしいと願うだけ

いつの間にか日の光がカーテンの隙間から漏れていた
体の中にできた
モヤモヤとした渦をどうにかしたくて

…外の空気が吸いたい

彼のグレーのパーカーを羽織って
小屋の前の、あの小川に行くことにした

.

朝の空気は澄んでいて、
思わず深呼吸する

ここへ来ると、
彼がいつも座る定位置がある

少し大きな岩の上に登って
そこに座る

朝日が小川の水面に反射してキラキラと光っていて、とても綺麗

『……紫耀』

無意識に口から零れた言葉は、
そのキラキラとした小川に落ちて溶ける

ーーーﾌﾞｰﾝ

遠くからエンジン音がする
だんだんその音はこちらに近づいてくる

やっと、帰ってきた

予想通り、あの白いワゴン車が見えた
小屋の前で止まり、紫耀が降りてくる

「…こんな寒いのに、何やってんだよ。…風邪引くぞ」

『…うん、…おかえり』

「…ただいま
…ほら、こんなに手、冷たくなってる」

右手を掴まれてぎゅっと握られる

『大丈夫だよ、平気』

「…俺が心配なの。戻るぞ」

握られていた手を繋ぎ直すと、
そのまま手を引いて、小屋まで歩き出した

私の手が冷たいせいか、

いつもよりもっと、紫耀の手が温かく感じた

.