-S- loving you. (ページ37)

今日:22 hit、昨日:47 hit、合計:702,153 hit

37. ページ37

＊＊＊

ふと目が覚めると
日付は変わっていた

でもまだ2時間ほどしか時間が経っていなかった

ここで目が覚めるとしばらく寝れない

初めて彼が隣にいない夜

やけに静かな空間が嫌で寝室を出る

小さな箱型の古いテレビを付けても特に面白そうな番組はなくて、すぐに電源を切る

なんとなく、宝探しを始めるような気分で、
部屋を物色することにした

居間には本棚があり、おそらくこの小屋の前の持ち主が置いていったであろう植物図鑑や辞書があったけれど、どれも私には退屈でしかなかった

しぶしぶテレビの前に腰を降ろすと、
ふとテレビ台に目が行く

何気なくテレビ台の引き出しを開けると、CDのようなディスクが1枚入っていた

『…何だろ？』

ケースの表にも裏にも題名のようなものは記されていない

気になったらそのままにしておけないタイプだから、
好奇心に負けて、それをデッキに差し込む

パッと画面が切り替わり、アナウンサーが映った
真剣な表情をしたコメンテーター達も映る

「昨夜未明、この家に住む平野裕太さんと妻の平野愛子さんが殺害されているのが発見され、警察は現在行方がわからなくなっている息子の平野紫耀さんを容疑者として追っています。事件は、まだ終わっていません」

そこでまた画面が切り替わり、スタジオではないどこか別の場所を映し出す

民家の玄関先に青いブルーシートがかけられている

画面右下に、写真と名前が出る

平野紫耀と記されていて

それは間違いなく私の知る
紫耀だった

きっと高校生のときの写真だと思う

「なぜ平野容疑者は、自身の父親と母親を殺害するに至ったのか、その凶行の裏には、一体何があったのでしょう」

「紫耀君？小さい頃は愛嬌あって可愛いかったわよ～挨拶もよくしてくれていたし…でも、まさかこんなことになるなんて思ってなかったわ～」

近所の人のインタビューなのだろう

「でもねぇ…平野さん家、ちょっと複雑なのよねぇ…裕太さん、バツイチで紫耀君がまだ小さい時に愛子さんと再婚したのよ～連れ子結婚」

「きっとそれが原因よ～何があったのか知らないけど紫耀君に溜まったものが一気に爆発しちゃって、あんなことしたんじゃないのかしら～？」

紫耀と母親の愛子さんは…本当の家族じゃないってこと？

頭がついていかない

コメンテーター達が再び映る

.