-S- loving you. (ページ36)

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『…私達…出会うべきじゃなかった？』

呟くようにそんな言葉を零す
途端に、私達の世界は静寂に包まれる

彼はそっと目線を前に戻して、ぼんやり灯る電灯を見つめる

「…そうかもしれない…
今Aが目の前にいるってことは、俺の過去の過ちの結果だから」

風の吹く音が
夜の向こう側から聞こえてくる

彼の言葉は私の心を痛いくらいにかき乱す

「それでも、俺は…Aに出会えて良かった…
自分のしたことが、肯定できないことだとしても」

『最近弱音ばっかり…紫耀らしくない…』

「…わかってたろ？
…元々俺はこんなやつだって」

そう言った彼にそっと微笑んでみせた
わかってた
だから好きになったのかもしれない

「俺を初めて必要だって言ってくれたのはAだったし、

俺がやってきたことは、どれだけの人の世界を奪ってきたんだろうって…
よくわかるようになった…

Aに出会って、触れて…わかるようになったんだ…」

俯きながら発せられるその言葉に切なくなる

『…紫耀、…苦しい？』

「うん、苦しい…
…でも、Aが、わからせてくれたから良かった」

『それなら、私も良かった』

小さく彼が笑う
そして、時計を見て、口を開いた

「…じゃ、行ってくる」

『もう…？』

「明日の昼までには帰ってくるから」

ポン、と頭に大きな手がのる

黒のパーカーの上からライダースを羽織ると、
玄関までさっさと行ってしまう

こんな夜中に出るなんて
今まで1回もなかったから、なんだか不安になってしまう

「鍵かけてくけど、窓とか戸締り、ちゃんとしろよ？
…犯罪者には気をつけないとな」

『…犯罪者なら、いつも一緒にいるもん』

「ふっ…逃げんなよ」

『逃げないよ。待ってるね』

お決まりの冗談に彼が無邪気に笑うと、もう一度私の頭を撫でてくれた

パタン、と扉が閉まって
その音が小さな部屋に響いた

彼がいなくなった部屋は虚しくて
特にすることもない私は、

寝室に行ってベッドに横になった

紫耀がいつも着けている香水の香りが微かにした
瞼を閉じて、1人ということをかき消すように、眠った

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