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＊＊＊
「寒くない？」
『…ん…ちょっとだけ』
「ここ、おいで
」
足の間に入れと手でジェスチャーする
そっと間に座ると後ろから腰に腕が回ってくる
「こうしてれば寒くない？」
『…うん…あったかい』
そのまま彼は私の首に顔をうずめて
さっきより強く抱きしめてきた
暫くの間、そうしていたと思う
遠くにビルや家の灯りが見えて、
空には数えきれないほどたくさんの綺麗な星と、優しい光を放つ月
この空間にいると、
この世界には私と彼だけしかいないような錯覚に陥る
そうなったらいいのに
「…A…こっち向いて…」
耳元で感じる甘さを含んだその声に
胸が締め付けられる
ゆっくり彼の方に振り返ると
思ったより近くに彼の端正な顔があって、そのまま数秒見つめ合う
そのままだんだんお互いの距離が縮まって…
そっと唇に彼の唇が重なった
短いリップ音を残して離れるお互いの唇
「…そろそろ戻ろ」
照れくさいのか、そっぽを向いてそう言う彼
でも私はもう少しこの甘い空間にいたい
『…待って、、もう少しだけ、ここにいたい…なんか…ここにいると、世界に2人っきりみたいに思えるの…』
立ち上がろうとする彼の華奢な指を握る
「…2人だけしかいない世界か」
2人だけの世界
それは、彼が誰からも咎められず
堂々と日の下を歩ける世界
「あるなら行ってみたいな、…その世界」
そう呟いて、
柔らかく微笑んでくれた
…
終わりの足音は静かに、
私たちに近づいていることなんて知らずに
.
5章 幸せのカケラ 完
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作者名：m
| 作成日時：2017年5月19日 1時
