-S- loving you. (ページ23)

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23. ページ23

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彼の震える唇で、また私の唇が塞がれる

「…馬鹿…」

『…馬鹿です』

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「…傷だらけやん」

私のシャツをゆっくり脱がしながら、小さな声で呟く

腕やお腹、足
ところどころ痣になっている部分に触れながら言う

「あいつらが……まだ…痛む？」

『…すこし、でももう、大丈夫です…』

「…ごめん」

またそっと抱きしめられる

「…俺のほんとの名前は
…平野紫耀」

彼は、そこにあった紙とペンで、ちょっとぐちゃぐちゃな文字で名前を書いた

『…平野…紫耀…』

「…A、もっと俺の名前、呼んで」

ゆっくり後ろに倒される

『…っ…紫耀…』

目を細めて、小さく微笑んだ彼

今までに見たことないその顔に

胸の奥がじりっと疼いた

彼が何を考えているかはわからない

もしかしたら嘘かも

都合よく利用されているだけかもしれない

彼の瞳に映る私は、ただの可哀想な女であっても、今はそれでいい

聞きたいけど、それは怖くて聞けない

そっと唇に口付けをされて

そのまま彼の唇は下に下がっていき、私の体に残った痣のひとつひとつにも優しい口付けを落としていく…

下着だけ身に纏っているだけの姿だから

恥ずかしいけれど
その感触が心地よくて

素肌と素肌が触れ合うのってこんなにも温かいものなんだと知る

「…脱がすよ」

すべてを取り払われて熱の篭った彼の瞳に見られる

「…綺麗」

…下から見上げる彼の方が、
何倍も綺麗なのに

また泣きそうになってしまう

彼の手が触れて、ほだされていく

そして、繋がった時に思った

この人が、

紫耀が、どうしようもないくらいに好き

抱きしめてほしくて彼に首に腕を回すと、

それに応えて彼も抱きしめてくれた

甘くて

酸っぱい

彼がくれたあのレモンの飴のような感情と
散った花がまた咲いて蘇るような感覚が、

また胸を締め付けた

.

3章散る花咲く花完

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