-S- loving you. (ページ17)

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17. ページ17

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"ごめんなさい"

"殺さないで"

命乞いの言葉

それは過去も未来も現在も

真っ暗な闇だった、
何も見えなかった

あの恐ろしい日々が、今になって
頭の中を走馬灯のように駆け巡って
思い出してしまったから

小さく小さく手足が震えだして.
頬を暖かいものが流れていく

「…殺さない。言ったろ」

落ちてくる穏やかな声色に

私は今、
彼がどんな表情で、
どんな瞳でその言葉を言ったのか、
見てみたくなった

その瞳は冷たいのか恐ろしいのか

「…殺さない」

もう一度そう呟くと
背中にひんやりとした何かが触れた

彼の、手

そしてその瞬間、
腕を引かれて彼の胸に引き寄せられ

ぎゅっと、抱きしめられた

彼がいつも着ているグレーのパーカーが頬にあたって、それを理解する

その腕が、優しく、強く
私の身体を包んでいく

彼の心音に何だか安堵して
震える身体をそっと、彼の胸にあずけた

今までの出来事
あの時受けた恐ろしくて忌まわしい記憶を、彼の腕がすべて受け止めてくれているような、
そんな気がする

どうしてこんなにも
幾多の命を殺めてきたその手が優しく穏やかなんだろう

こんなのって、おかしい？

今はこの手に救われている

…いや、何度もこの手に救われたんだ

.