-S- loving you. (ページ1)

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1章夏の終わり

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【殺人鬼】さつじん-き
何人もの人を殺した残酷な悪人を、
鬼に例えた言葉

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～回想～

時間がなかった
世の中のことに目を向ける余裕も、当たり前にある日常を愛する余裕も

私にはなかった

毎日が退屈だった。
いつも自分の過去と未来の一本線の前と後ろばかりを見つめていた。

毎日が生きにくかった。
死にたい訳じゃないけれど、生きにくい。

それでも、私に休む時間なんてなかった。

「A、最近物騒だから学校終わったら真っ直ぐ帰って来なさいね」

『わかってるって。すぐ帰るから』

そういった母の言葉を、
軽く受け流してローファーに足を入れる。

「晩ごはんはあなたの好きな生姜焼きだからね～」

閉まりかけた玄関の扉の向こうから母の声

西野A、
華のセブンティーンと言われる17歳

…だからといって華やかって訳ではないんだけれど

毎日繰り返される日常に
少しばかり憂鬱になる

もうすぐ夏も終わる。日差しはまだ暑いけれど、涼しい潮風が頬を掠めた。

海沿いの通学路を歩き
高台にある学校へと、足を進めた。

この時の私は、
まさか自分があんな事になるなんて、思いもしていなかった。

いや、誰も予想なんてしていなかったのに。

高校を卒業するまで、

朝起きて、学校へ行き、授業を受け、家に帰って、寝て、また起きて学校へ行く

この退屈な日々を過ごすんだと思っていた。

……貴方に出会うまでの私は、
きっとあまりにも幼稚過ぎていたんだと思う

貴方に、

紫耀に、もう一度だけ、会いたい

.

-回想-